従業員を経営に参画させるには、従業員代表監査役の導入がカギ--実証会計学で考える企業価値とダイバーシティ 最終回(全4回)
明治大学商学部 大学院商学研究科
教授 山本昌弘
現在、与党民主党は、企業統治の新たな変革を検討している。公開会社法と呼ばれる法案で、上場大企業の内部統制を強化するために、経営の監視役として監査役や社外取締役の権限強化を目指している。
中でも注目されるのが、監査役会を設置している企業に従業員代表の監査役を義務づけることである。
今日、企業統治は、監督機関と執行機関を分離することによって、その機能が強化されつつある。監査役に代表される前者には、特定の利害に偏らない公平なスタンスが求められるのに対し、執行役が該当する後者には、CEOなどプロフェッショナルとしてのスキルが要求される。
従来、日本では取締役が監督と執行を兼務し、また監査役も役員として株主総会で選任されるなど、両者とも株主代表の色彩が強かった。これに対しドイツでは、共同決定制度によって監査役会に従業員代表を選出することを義務づけてきた。
筆者は『会計とは何か-進化する経営と企業統治-』(講談社選書メチエ、2008年)で、現行会社法の枠内での企業統治強化方法として、従業員代表(ないしは労働組合代表)の監査役を設置することを提案した。それがまさに新法として制度化されつつある。
ここでは概略のみご紹介するが、経営執行については専門的スキルが要求されるものの、従業員の積極的な参画が企業価値を高めることが実証されてきている。たとえば、企業経営に欠かせない年度予算の作成で予算数値をトップダウンで一方的に押し付けるよりも、それぞれの部署で実際に予算執行にかかわる人たちが参画し決定していくほうが、その成果が向上するといわれる。
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