従業員を経営に参画させるには、従業員代表監査役の導入がカギ--実証会計学で考える企業価値とダイバーシティ 最終回(全4回)

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 従業員が経営に参画していく場合に、会計面から見て大切なことは、社内の予算編成である管理会計とその結果の外部への報告、すなわち財務会計をうまくリンクさせることである。会計学では企業価値はキャッシュフローをベースに考える。世界標準となっている国際会計基準でも、キャッシュフローを重視する。

 必然的に企業はキャッシュフローを意識した経営が必要となってくる。こうした中、財務会計でも管理会計でも活用できる指標が、キャッシュフローを基本にして経済的あるいは株主の付加価値を算出するEVA(経済付加価値、※EVAは登録商標)やSVA(株主付加価値)である。これらを使う利点は目標とする数値を掲げ、その向上を目指して業務を行えば、それが企業価値アップにもつながることだ。経営と各部門の目標が一致する便利な指標といえる。

 成果をEVAやSVAで測定し(表にSVAのランキングと計算式を掲載)、その結果に連動して各部門や所属する従業員に報酬を与える(おカネだけでなく賞賛ややりがいのある仕事なども含むだろう)ようにすれば、わかりやすい評価制度になる。

 さて、従業員代表監査役は、会計上の不正がないかどうかを厳しくチェック(これは株主のみならず、会社を取り巻くすべての利害関係者にとって重要なことである)するとともに、経営執行の前提となる計画策定や予算編成に従業員が積極的に参画できるような環境作りも行っていかなければならない。さらに、評価が適切に行われているかを従業員の立場から監査する役割も求められる。

 このように経営者、従業員が共通の会計指標を使い、従業員代表監査役がチェックを行うようにすれば、評価制度は明確なものになる。その結果、能力的に優れているマイノリティを冷遇することもなくなっていくだろう。また、優秀な人材をつなぎ留めるために働きやすくなるような制度も自然に出てくると思われる。

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