従業員の安全を守らないのもブラック企業だ 第4回 顧客を守り、会社を守る
損害賠償額1500万円
昨今、若者の「使い捨て」が疑われる企業等(いわゆる、ブラック企業)が社会問題化しています。ブラック企業に法的な定義などはありませんが、労働者の育成を行わず、長時間や過重な労働を強いて残業代も払われないなど、労働者を使い捨てのように扱う企業を指します。
ブラック企業の問題では、劣悪な労働条件だけがクローズアップされていますが、果たしてそうなのでしょうか。昨年12月に厚生労働省から発表された、『若者の「使い捨て」が疑われる企業等への重点監督の実施状況』では、過重労働による健康障害防止措置が実施されていない、もしくは不十分なものとして、約2割の事業場に対して是正勧告や指導が行われています。
行政機関は残業代の不払いなどと同様に、従業員の健康や安全に関する措置に対しても厳しい目を向けているのです。会社が従業員の安全を守るという意識や姿勢を欠いていることは、ブラック企業といわれかねない一つの要素となっていることは間違いないでしょう。
従業員の安全に対する配慮を欠いた場合には、会社の責任はどう問われるのでしょうか。例えば、従業員が営業所の2階倉庫の開口部から1階に転落して負傷し、後遺障害を負ったという事故の裁判例です。従業員は会社に対し、会社の安全配慮義務違反の債務不履行または不法行為に基づき損害賠償を請求しました。この裁判例では、2階の開口部から落下する危険性が具体的に存在していたと認められ、会社が落下を防ぐための安全確保の措置を講じる義務を負っていたにもかかわらず、その措置を講じていなかったと判断されています。そして、会社に対しては、損害賠償額として約1500万円の支払いが命じられています。
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