従業員の安全を守らないのもブラック企業だ 第4回 顧客を守り、会社を守る

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従業員を守ることは、顧客を守ること

安全配慮義務についてのポイントは次の通りです。

①従業員が心身の健康を害することを会社が予測することができたか(予見可能性)

②上記①を回避する手段が会社にあったか(結果回避可能性)

 職場において、この予見可能性や結果回避可能性を考慮するのは、なにも従業員のためだけではありません。先日、大手都市銀行の出入口に設置してあったマットが濡れていたことを原因としてお客様が転倒した事故に対して、銀行側の注意義務違反が認められ、被害者に対する賠償が命じられた裁判が報道されていました。損害賠償額は約90万円と大きなものではありませんでしたが、会社のイメージや信用といった面から見るとどうでしょうか。決して、好ましいものではないはずです。

 これらの事例から導き出せることは、従業員の安全を考えることは顧客の安全を考えることと同じだということです。従業員の安全を守ること、すなわち職場にある危険性をあらかじめ察知して、その対策をとっておく、といったことは顧客に対する危険性をも排除することに繋がるものです。

 厚生労働省は、若者の「使い捨て」が疑われる企業等に対して、法違反を是正しない会社の送検や企業名の公表も視野に入れて厳しく対応していくことを明言しています。新聞・テレビなどの報道や行政からの公表などによって会社名が明らかになることは、社会的な信頼を失いかねず、会社にとっては大きな痛手となることでしょう。場合によっては、事業の継続をも困難にさせる場合があります。

 さらには、従業員の権利意識の高まり、SNSの普及などで会社はあらぬ風評を受けかねません。会社のリスクを管理するうえでも、信用やサービスといったものをより向上させていくためにも、職場の環境を含めた従業員の安全や衛生に注視すべきです。

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