例えば、季節性インフルエンザの場合、流行のピークとなる1~2月には、1日で40~50人が亡くなる。これに対して新型コロナでは、第1のピークであった4~5月には1日当たりの死亡者が14人、第2のピークであった8月では1日当たり9人であった。厳格な都市封鎖(ロックダウン)を行った米欧諸国で1日当たり100人以上の死亡者を出したのに対し、緩やかな活動制限しか講じなかった日本の死亡率は際立って低い。
少なくとも、1~3類に指定されているペスト、コレラ、腸チフスなどと同等の危険性と位置付けるのは過剰対応である。季節性インフルエンザや麻疹が含まれる5類相当が妥当なところではないか。
第2に、医療崩壊を防ぐためである。
2類相当に指定されると、原則として感染者は指定医療機関に入院させなければならない。ところが、新型コロナのPCR検査で陽性となった人には無症状者や軽症者が非常に多く、すべて入院させてしまうと病床があっという間に埋まってしまう。
今年3月ごろから始まった新型コロナの流行はインフルエンザとは重ならなかったが、例年12月ごろからはインフルエンザ患者も急増するため、医療機関の受け入れ能力が逼迫することが懸念されている。そのため、新型コロナの無症状者と軽症者は入院対象から外し、重症者に医療資源を集中させることが必要という声が高まっていた。
また、指定感染症に指定されると政府への全数報告が必要になるが、この事務を担う保健所の対応能力も限界に達している。これらの問題意識は8月28日の安倍首相の記者会見でも提示されており、今回の運用見直しの一番大きな理由として掲げられている。
過剰な対策に追われ、国民が疲弊しきっている
第3に、国民の疲弊が見すごせないレベルに達しているからである。
職場では、従業員の健康状態のモニタリング、感染予防対策、感染者・濃厚接触者の調査など、多種多様な追加措置が求められている。学校でも、もともと長時間労働が常態化していた教職員が、消毒などの感染予防策を講じなければならず、業務多忙に拍車がかかっている。また、子どもの学習の遅れや心理的ストレスも無視できない。外出抑制による運動不足で、健康2次被害も懸念されている。これらもすべて、指定感染症によって「当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある」と位置付けられたことに起因したものである。
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