さらに、感染症対応という観点からだけでなく、経済のさらなる悪化を防ぐためにも指定感染症の解除が不可欠である。
コロナショックで景気後退に陥った主因は個人消費の急減であった。実際、今年4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率28.1%減という統計開始以来最大のマイナスになったが、この6割近くは個人消費の減少で説明できる。過去のどんな景気後退局面でも、これほど個人消費が落ち込むことはなかった。
そして、個人消費落ち込みの主因は、消費者の活動抑制である。これは、政府・自治体からの要請によって消費者の活動が制限されたこと、消費者が自ら活動を自粛したこと、という2つの面からもたらされた。いずれも、新型コロナが指定感染症に指定されたことが原因で生じた動きである。
とくに、消費者自身による活動自粛の広がりが深刻だ。新型コロナに対する強い恐怖意識が、消費回復の大きな阻害要因になっている。「恐怖の新型コロナ」という見方が根付いたのはテレビ・新聞報道の影響が大きいが、それを法的に裏付けたのが指定感染症の指定である。したがって、指定感染症を解除しない限り、消費者の萎縮心理を解消することは困難だろう。
医療崩壊の防止も指定感染症を解除する理由の1つであるが、本当に重要なのは、アナウンスメント効果を通じて「恐怖の新型コロナ」観を修正し、国民の萎縮心理を解消することである。したがって、「2類感染症相当を継続しつつ、無症状者への適用のみ除外する」といった小手先の対応は望ましくない。新型コロナの危険性に見合った感染症分類まで引き下げることで国民に明示する必要がある。
給付金によって足元の可処分所得は増えている
現在、個人消費は2つのシナリオの岐路に立たされている。
1つめは、萎縮心理の解消によって個人消費が急回復するシナリオである。
足元の個人消費の落ち込みで特徴的なのは、所得環境がまったく悪化していないということである。リーマンショック後には、まず所得環境が悪化して、それに連動する形で個人消費が減少した。しかし今回は、景気悪化で勤め先収入は減少したものの、政府による特別定額給付金によって可処分所得は増加している。すなわち、全体としてみれば、財布の中は潤沢で支出する余裕は十分あるのに、支出機会が奪われているため、貯蓄が積み上がっている状態である。萎縮心理が元に戻れば、高水準の可処分所得に見合った消費の盛り上がりが期待できる。
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