2つめは、このまま萎縮心理が解消せずに消費低迷が長期化して、景気が二番底に向かうシナリオである。
売り上げの減少が短期にとどまるなら企業も耐えられるが、回復が先行きまったく見込めないようなら、サービス産業を中心に事業縮小や倒産・廃業を選択する企業が広がっていく。これが家計の雇用・所得環境を悪化させるため、さらに消費活動を縮小させることになる。コロナショック下の消費低迷が「お金はあるのに支出機会がない」状態だったのに対し、「お金がないから支出できない」というリーマンショック型の消費低迷に変化するのである。
では、足元の個人消費はどちらのシナリオに沿っているだろうか。残念ながら、7月ごろから再び消費に停滞感が強まってきている。
クレジットカードの取引データに基づく「JCB消費Now」によれば、6月までは着実にクレジット決済額のマイナス幅が縮小してきたものの、7月に入るとサービス分野を中心に回復の動きが止まってしまった。5月25日の緊急事態宣言解除後に大きく盛り上がった家電販売額も、7月半ばから前年割れになる週が目立つようになった。
こうした変調は、消費者が活動抑制を強めたからである。Googleが公表している人出状況データをみると、7月から小売り・娯楽施設への外出を控えている様子が鮮明である。とくに東京都では平時の7割程度しか活動していない。7月の4連休、8月のお盆のときも、消費者の活動に大きな盛り上がりはみられなかった。欧州諸国の大半がほぼコロナ前の活動水準に戻っているのとは対照的である。
さらなる倒産・失業増加で悪循環に陥る
消費者の萎縮心理は、さらなる問題も引き起こす。いびつな消費構造を生み出し、倒産・失業リスクを一段と高めるからである。
消費支出の伸び率について、リーマンショック直後(2008年11月から2009年1月までの3カ月間)とコロナショック下の直近値である今年6~7月とを比較してみた。まったく異なる姿が描き出されている。
リーマンショック後には、多くの品目が満遍なく減少していた。ところが、コロナショック下では、支出が急増した品目と急減した品目に二極化している。急増したのは、家具、家電製品、家事用品、IT機器、通信費など、在宅関連の財・サービスである。急減したのは、交通費、レジャー、旅行、外食など、外出関連の財・サービスである。
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