「成功する会社」と「正しい会社」の決定的な差 「トレイルブレイザー」はきれい事の本に非ず

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企業の社会的責任がますます求められる時代に、経営者は企業や社会に対してどんな指針を示すべきか(写真:SasinParaksa/iStock)
ニューヨーク・タイムズとウォール・ストリートジャーナルでベストセラー入りしたマーク・ベニオフ著『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』が7月末に刊行され、各方面で話題になっている。
クラウド・コンピューティングの先駆者であり、セールスフォース・ドットコムを創設、20年で従業員5万人、GAFAと並び称される企業に急成長させた著者の思考を細密につづった1冊だ。成功と社会貢献を対立軸にしないその企業文化は、世界で賞賛されている。
「この本に書かれていることは、単なるきれい事ではなく、来るべき時代の最新潮流と読み解きました」――ユニークな勤務制度や地域に根差した面白いサービスを次々にリリースしている面白法人カヤック代表取締役CEOの柳澤大輔氏が、企業の社会貢献とは何かを語る。

現役の経営者が描く「反省記」

『トレイルブレイザー』のキーワードの1つは、「アクティビストCEO」です。マーク・ベニオフ氏は、それがどういうもので、どのように発展させられるのかということを、今後の企業のあり方とともにズバッと斬り込みながら描いています。

『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

自分は経営者だから経済のことだけ考えていればよいという時代ではないことなど、いろいろといい気づきがあって、ハッとさせられる本でした。そして、これからは社会に対する責任を担う企業こそが、消費者からも、あるいは働く社員にも選ばれるようになっていくことがイメージできました。

会社を辞めてから、いろいろなことを発言したり慈善事業をしたりするのではなく、ベニオフ氏の場合は、現役の会社経営者という立場ではっきり主張して、自社の明確な指針を示しており、かつ行動に出ています。こういう経営者が今後増えてくるのだろうと思います。

社会問題に対しても、やや過激な発言もされていますから、おそらくアンチも多く、批判にもさらされているのだろうかと推測しますが、これからは「成功する会社が選ばれるのではない。善いことをする会社が選ばれるのだ」とベニオフ氏が最後に言い切っているのは、未来に対する力強さを感じます。

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