「成功する会社」と「正しい会社」の決定的な差 「トレイルブレイザー」はきれい事の本に非ず

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そういう意味でも、何が「いいこと」なのか、というのは本当に難しい問いなのだなと思います。だからといって考えなくていいということではなく、そこを踏み込んでつねに追求し続けなければならない。こうしたメッセージがこの本でフォーカスされています。この論点は、経営者の意識改革を後押ししてくれるでしょうね。

では、どうすれば経営者の意識が変わっていくのか?

経営者の意識改革を進めるにあたっては、社員1人ひとりの力も大きくなってきている時代なのだろうと思います。本の中には、ベニオフ氏も、社内からの突き上げによってアクティビストとして決断を迫られ、経営者としても会社としても変わっていくというエピソードがあります。

経営層を社員が突き上げるという話を聞くと、労働組合を想起しがちですが、労働組合は搾取する側・される側という構図の中で、利害を間に綱引きをするイメージでしょう。

そうではなく、会社が「よい」稼ぎ方をしているのかを、社員が経営層に向かって突き上げる。つまり、自己の保身のためではなく、より大きな社会の正義のために、社員が動くのです。このような流れは今後増えるのではないでしょうか。

今はSNSの影響で発信力も高まっていますし、個人が先に問題点に気がついて、たった1人でも「いいことをしよう」と発信して会社をよき方向に変えていくことができるという時代になりつつあります。

つまり、社員が経営層の意識を変えることもできるし、だからこそ、みんなで一緒になって、企業にとって「いいこと」とはどういうことなのかを、考えていく必要があります。僕も今後、そのような気持ちで経営をしていかなければならないと思っています。

しかし、「アクティビストCEO」というと、政治の世界も含めて発信するイメージがあります。基本的に日本人には、宗教と政治の話はしないという特有の感覚があり、そこまでできるのかというと、自分でも自信はありません。

ただし今後、そこに対して働きかけなければならないタイミングが訪れたとき、自分はどんな態度をとるのか――僕自身はそのような思考訓練はまだしていませんが、ここは1つの挑戦になってくるのでしょうね。

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