2人の死に、思った。“もしも彼らに家族がいたらどうしただろうか”、と。愚痴をこぼせる妻がいる。これからの未来を生きようとしている子どもがいる。側にいる家族の姿を見て、何か自分にできるアルバイトを探したかもしれない。家族の頭数分の給付金を国から受け取り、少しの間はしのげたかもしれない。
そして、自分が独身のまま50代になったら、どうなっていたのかを考えた。
「20歳前後の頃、2歳の子どもがいた4つ上の女性の付き合っていたんです。数か月だったけれど、彼女の家に転がり込んだこともあった。そのときのことが懐かしくなって。人と一緒に暮らすって煩わしいこともあるけれど、楽しいことも多かったな、と。それで、40歳を前にした今、もう一度真剣に結婚を考えてみようと思ったんです」
こう言いながらも、1つの迷いを口にした。
「僕は、年収が460万円しかないんですけど、お見合いで結婚できますか?この記事に出てくる人たちは、男性の年収が高い人が多かったから」
確かにこれまで記事に登場してきた多くの男性たちは、大手企業に勤めていたり、自営業でも年収が1000万円を超えていたりした。
「記事にしてきたのは、条件的にはとてもいいのになぜか結婚できない。その原因を掘り下げた内容が多かったからだと思います。38歳で460万円は、平均年収ですよ。今は夫婦共稼ぎの時代だし、何の問題もありません。普通の年収の人が普通の結婚をしていくほうが多いのですよ」
こう言うと、ほっとしたように言った。
「それを聞いて安心しました。これまでの人生を考えると、この年収を稼げるようになった今の自分は、上出来だと思っているんです」
そして、これまでの歩んできた道のりを語り出した。
18歳で初めての「ナンパ」に成功
高校は大学もつながっている附属校に通っていたのだが、その大学には進学しなかった。コンピューターグラフィックをやりたいという気持ちがあり、行きたい大学があったからだ。しかし、受験に失敗し、浪人して予備校に通うことにした。
ところが、卒業した春休みに行った免許合宿で、一緒に参加していた女の子を初めてナンパ。それがうまくいき、女性に目覚めてしまう。
「それまで女の子とは付き合ったことがなかったので、ナンパが成功したことで味をしめてしまった。若いから欲の塊じゃないですか。こんなに楽しくて気持ちいいことがあったんだって(笑)。その子は東北に住んでいたので、合宿が終わって自然消滅的に別れてしまったんですが、声をかけた女の子に振り向いてもらえる快感が忘れられなくなった」
ナンパの技術をもっと極めたい、成功率をあげたい。そんな気持ちから、キャバクラのキャッチのアルバイトを始めたという。
「親には、予備校に行くと言っておきながら、夕方の5時から朝の8時まで、道端でキャッチをしていました。夕方は働く女の子をスカウトして、夜から明け方にかけては、酔っぱらいを捕まえて店に連れていく。そんなことを2年近くやっていました。当然予備校には行かず、将来の夢よりも、目先の楽しさにおぼれていました」
また、バイト期間中に、先述の4つ上の子持ち女性と付き合うようにもなった。彼女は店のキャバ嬢だった。
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