年収460万で、結婚できますか?
8月のある日、孝雄(仮名、38歳)が、面談にやってきた。身長は172センチあり、スラリとした体型で、ごく普通のサラリーマンの風貌。面談ルームの椅子に座ると、開口一番にこう言った。
「ずっと1人で生きていこうと思っていました。実家の両親や弟を見守りながら、生活していける金が稼げればいいや、って。でも、緊急事態宣言期間中に、これからの生き方を考えさせられる出来事があって……」
孝雄は、運行会社で観光や商業用の車をコンピューターで管理し、配送を手配する内勤をしていた。
「ダイヤモンド・プリンセスの船内感染が報じられて以来、予約されていた観光バスの運行が軒並みキャンセルになりました。緊急事態宣言期間中は、バスもタクシーも使う人がほとんどいなくなった。僕は社員なので、コンピューターシステムをチェックするために週に何回かは出勤があったし、給料が出ていたんです。でも、運転手さんは契約や歩合制だったので、収入がゼロになってしまった」
ある日、出社すると社内がざわついていた。
「社長から、『運転手の○○さんが、アパートで首を吊って亡くなった』と聞かされました。50代で独身。収入もなくなって行先の見えない状況の中、今後の人生を悲観してのことだったと思うんです」
その数週間後、また1人の自殺者が出た。
「今度は入水自殺でした。やっぱり50代で独身。仕事がなければお金も入ってこない。そんな中で、生きていく力を失ってしまったんでしょうね。こんなことが立て続けに起こって、やりきれない気持ちになりました」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら