ごく普通の38歳男性がこれまで独身だったワケ 職を失い、300万円の借金を背負ってしまった

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人混みが苦手なのは、昔からの気質でもあった。片田舎に住み、高校まで地元だったので都会の雑踏や混雑とは無縁な生活を送っていた。ところが、高校の夏休みに友達と原宿の竹下通りに行ったとき、人混みの中で気持ち悪くなってしまった。また友達と海に行くことになり混雑した電車に乗ったら、途中で息苦しくなって海までたどりつけず、1人で帰ってきたこともあった。

「会社に期待されての栄転だったので、プレッシャーもあったのかもしれません。医者に相談したら、『今の環境を変えるしかない』と言われました。元の職場の上司に相談をして、『こちらに戻してくれませんか?』と頼んだのだけれど、『推薦して紹介をしたばかりだし、今は本社に言い出せないから、一定期間は向こうで働いてほしい』と言われました。結局、つらくて仕事を辞めてしまいました」

頑張って立て直したはずの人生だったのに、大きな挫折を感じた。もう無理をするのはやめよう。普通の生活をしていけばいい。その後は、派遣社員で仕事を転々しながら、安アパートで食費を抑える生活を送っていた。

「ただ縁があって、今の会社に4年前に再就職できたんです。今の会社は住んでいる家から近くて電車に乗ることもない。せっかく社員になれたのだから、これからはまじめに働いて生きていこうと思っていたんですね」

そんな中で今年に入ってから、新型コロナウイルスが蔓延する事態となり、職種柄、会社が開店休業状態となり、無収入になった契約ドライバーたちの悲劇が起きた。

挫折を糧にして前に進んだ人間は、強い

「会社の50代の独身男性が2人、続けて自殺したときに、自分の人生を振り返ったんです。“何度かどん底に落ちて、死にたいと思ったことがあったな”って。でも、そんな自分を踏み止まらせたのは、実家の親や弟の存在でした。親は元気なんですよ。でも、弟は大学時代に、何があったかはわからないのだけれど、引きこもりになった。大学も途中で辞めてしまったんです。今は実家で親と暮らしていますが、人と関わりたくないから、夜中に商品配送をする工場で働いている。もし自分が死んだら親にも迷惑がかかるし、親が老いて死んだ後に、弟はどうなるのかと。親に迷惑をかけたくない、弟を見捨てられない。そんな気持ちがあったから、どん底に落ちても踏ん張れたんだと思います」

ここまでの話を聞いて、私は孝雄に言った。

「挫折を乗り越えてきた人間は強いですよ。『いろんなことがあったのに、今社員としてこれだけ稼げるようになった自分は上出来』と、自分に言えることが素晴らしい。婚活にとって一番大切なことは、自分を肯定してあげることです。自分のことが好きでない人間が、他人を好きになれるはずがない。孝雄さんは、いろいろな経験をしてきているからこそ、傷ついた人の気持ちもわかるし、人にも優しくなれるのだと思います。これから婚活を、頑張っていきましょうね。私も精一杯サポートしますよ」

生きていくうえでの経験に無駄なことは、何一つない。失敗も痛い思いも、それを糧にして好転させられる力があるかどうかで、人生の明暗は分かれる。

婚活においても、そうだ。「結婚できる」と信じて会い続けている人は結婚できるし、「自分は条件が悪いから」「結婚できずに残っているのはヘンな人ばかり」「相談所は何もやってくれなかった」と、できない理由を探している人は、永遠に結婚できない。

数カ月後に、孝雄の成婚物語がここに綴れることを、私は信じている。

鎌田 れい 仲人・ライター

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かまた れい / Rei Kamata

雑誌や書籍のライター歴は30年。得意分野は、恋愛、婚活、芸能、ドキュメントなど。タレントの写真集や単行本の企画構成も。『週刊女性』では「人間ドキュメント」や婚活関連の記事を担当。「鎌田絵里」のペンネームで、恋愛少女小説(講談社X文庫)を書いていたことも。婚活パーティーで知り合った夫との結婚生活は19年。双子の女の子の母。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイトはコチラ

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