浜田氏は東京大学野球部監督として何を目指していたのだろうか。
「僕が究極の目的にしたのは“愛のある官僚”をつくることです。官僚とは、いわゆる役人だけではなく、エリートビジネスマンなども含みます。
東京大学は官僚養成学校です。東大野球部の選手も卒業すれば、官僚になります。普通の東大生は高校では成績トップで、大学でも負け知らずのまま卒業します。でも、野球部員はほかの強豪大学と試合をして、『頑張っても努力は実らないこともあるんだ』ということを経験します。
そのときに方向転換することになる。方向転換とは、自分が間違っていたことを認めることです。勉強で成功し続けてきた東大生には受け入れがたいことです。つまり、東京大学野球部で野球をするということは、『自分がいくら努力しても勝てない相手がいる』と気がつくことでもあるんです。
でも素直に『間違っていました、すいません』と認めて、周りの意見を聞き入れる経験をすることで、“愛ある官僚”になれると思うんですね。要するに意地を張って『Go To トラベルキャンペーン』をやり続けるとか、そういうんじゃなくて(笑)、だめなときには他人の意見に耳を傾けて方向転換できるエリートを育成することですね」
忘れがたい選手たち
在任中、印象的な選手にも数多く出会った。
「2016年春に二塁手でベストナインになった桐生祥汰は、やられてもやられても立ち直る、強いメンタリティーの持ち主でした。苦手なところは捨てて、得意なところで確実に勝負をした。バッティングも自分の得意なところを確実にできるようにする練習をしていた。
いろんなことをやる練習は楽しいですが、精度を上げる練習は同じことを繰り返すので楽しくない。彼はそれを一生懸命やっていました。
また田口耕蔵は、入学したときは『こんな下手くそ見たことない』というレベルでしたが、彼はパワーで勝負したいということで、バットに当てる練習ではなく、芯を外しても遠くに飛ばす練習をしていました。僕はそれを認めた。最初は代打専門でしたが、レギュラーになりたいと守備練習をいっぱいやり始めました。そして最後は4番を打ちました。
あとは各世代のキャプテンは立派でした。そして、学生コーチもキャプテン以上に立派でした。いい選手に恵まれたと思います」
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