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ノーベル経済学賞候補が、いま考えていること  世界的第一人者ブランシャールのマクロ経済学

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そして、MITは数理的かつ実際的な経済学的アプローチを重視しており、ブランシャールにとってその環境は“水が合う”ものだった。スタンレー・フィッシャーの下で博士論文を仕上げ、一時はハーバード大学で教鞭を執るが、MITでの教職ポストが提示されると、すぐに戻っている。

MITでのブランシャールの評価は、「論理的に端正」「直感的、実際的であることを好む」「エレガントだが率直な物言い」「経済学オタク的ではない」「理論、経験、政策を兼ね備えたオールラウンダー」といったものだ。時に威圧的なほどの知的センスでクラスを支配しながら説明が明晰でわかりやすく、その講義はカリスマ的な人気を誇った。

学生からも信頼されていたようだ。よく進路について相談され、彼らしく率直な見解で答えていた。後に同僚となるある学生から「IMFはどうでしょう?」と問われて、「キャリアを棒に振ることになるぞ」と即答したという(前出、The Washington Postの記事を参照)。

事実、MITの恩師であるフィッシャーに2度誘われても、IMF入りには首を縦に振らなかった。そんなブランシャールだが、彼はその後、いろいろな経緯があり、IMFに所属することになる。自身の予想とは違っていたかもしれないが、IMFでのキャリア(2008~15年)は、自身にとって非常に重要なものとなった。

創設者ケインズを忘れたIMF

ブランシャールがIMFで職に就いた2008年、世界経済は折しもリーマンショックに見舞われていた。世界各国はIMFの助力を切実に必要としていた時期である。

ただし、IMFには、ブランシャールが教え子にお勧めしないと即答してしまうほどの芳しくない評判があったのも事実で、とくに経済学者のなかでそれは根強くあった。

IMFへの批判は、ジョセフ・スティグリッツの強烈なものが有名だが、IMFは本来的に逆循環的な方策を提案する機関であるべきなのに、順循環的なアドバイスしかしない、という評判である。つまり、「雨が降ったら傘を取り上げる」という批判だ(藪下史郎・荒木一法編著『スティグリッツ早稲田大学講義録 グローバリゼーション再考』を参照)。

IMFはもともとジョン・メイナード・ケインズが、第2次世界大戦後まもない時期に設立に関わっており、国家における経済政策(金融政策・財政政策による景気対策)が世界経済においては不在であることを危惧して「雨の日に傘を貸す」ために作られた機関だった。

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【紆余曲折を経て、自己責任論を主唱する巨大官僚組織に】

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