問題はその先だ。どうなるのか。私は、大転換が起こると思っている。
ただし、これはコロナショックで転換が起きるのではない。「世界の知性」などと呼ばれるような人々が「コロナで世界が変わる」という類の本をにわかに出版しているが、嘘だ。これが第3の嘘である。
コロナで世界は何も変わらない。言ってみれば、やっかいな感染症が1つ増えただけだ。21世紀は感染症の世紀で、すでにSARS、MARS、新型インフルエンザと3つも増えていて、新型コロナも4つ目が増えるだけで(少しより厄介だとしても)、世界は何も変わらない。変わるとすれば、すでに変わっているのであって、感染症の21世紀はだいぶ前に始まっていた。
そのほかの変化もまったく同じで、すでに起きていた変化が加速しているだけだ。新しい働き方も、DX(デジタルトランスフォーメーション)とか何とかいうやつも、高齢者施設のあり方も、医療のあり方も、すべて新しい現実はだいぶ前に始まっていた。その変化が加速しているだけのことだ。何も新しいことはない。
地政学についても同じだ。中国をはじめ、コロナ対策でのアジア諸国のパフォーマンスのよさや、国ごとの実力の差が顕在化した欧州については誰の目にも明らかになった。アメリカは金融市場こそ豊かで依然盛り上がっているように見えるが、社会インフラは脆弱であることが、再度確かめられた。コロナによる死者の多さも格差社会のひずみが大きく影響している。
しかし、これについても間違った議論が多い。世界の知性は「世界が変わる」などといっているが、そうではない。アメリカの覇権の放棄、中国の影響力のさらなる拡大が加速するだけだ。その点で、かんべえ氏の、ドナルド・トランプ大統領についての最近の議論も一部間違っているのではないか(詳しくは「『いかさまハリス』と罵るトランプ陣営の勝算」をご参照)。
どうも日本のインテリ層、政治家、官僚たちは共和党が好きなようなのだが、少なくとも、その延長線上で「トランプ大統領のほうが日本にとって望ましい」という議論をしたがるのは明らかに間違いだ。トランプでいいことはひとつもない。そして、そういう議論を有識者たちがしているのは、世界で日本だけだろう。
日本の保守系有識者たちが、民主党よりも、共和党を好む妥当な理由の多くは、軍事戦略によるものだ。共和党のほうがタカ派であると同時に、無駄な介入はせず、合理的に「アメリカ第1主義」の安全保障戦略をとる。一方で民主党は、中途半端な正義感から介入してしまったり、中国の経済市場の魅力におぼれて外交的に譲ってしまったりということがあるからだろう。
ここは賛否両論あるし、どちらもあり得るのだが、トランプ氏がアメリカの大統領であることで世界の安全保障にとってよいことなど、ひとつもない。
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