またトランプ大統領が表面的に対中強硬派であることは、仮に短期的に効果があったとしても、長期的には何のよいこともない。
外交は常に長期で考えるべきである。長期で考えれば、短期的に中国を封じ込めることよりも、アメリカ、欧州、中国の3極の均衡の下に、中国がこのバランスを崩せないようにすることのほうが重要だ。つまり、中国がその均衡から抜け出そうとすれば、米欧の利となるような状況を保ち続けることが、中国の世界的覇権掌握への抑制となるからだ。短期的な対中強硬策は、何の役にも立たない。
最重要事項は「欧州とアメリカの結束再強化」
トランプ大統領による「世界秩序の破壊」でもっとも深刻なのは、アメリカと欧州の関係に傾きが生まれたことだ。まもなく亀裂になるかもしれない。欧州は、明らかに米中のバランスで言えば、中国側に傾いている。どんなに表面的に中国を非難しようとも、実質的には、中国を責めることはない。対中包囲網を作りたがっているのは、せいぜい、アングロサクソン国家だけで、しかも、イギリス、カナダ、豪州の対中包囲網は経済的に余裕のない、彼らにとっては非常に危うい、持続可能とは思えない「絆」だ。
したがって、現在最も重要なのは、アメリカに世界秩序維持から抜け出させないことであり、欧州とアメリカの結束を再度強めることであり、それにはトランプ大統領は最悪である。
とにかく欧州は余裕がない。ロシア、ベラルーシ、ウクライナに対する安全保障リスクに対しては一枚岩になれるかもしれないが、中国に対してはもはや不可能に近いだろう。したがって、中国との関係を切らせるのではなく、米欧の結束を強めることで3極のバランスを取る以外に方法はないのだ。
また、アジアの安全保障はもちろん重要だが、長期的には、グローバルに中国を押しとどめられなければ、アジアは中国に完全に支配されるのは必然だ。
すでに、実際には、アジアは中国に支配されてしまっているといってもよいかもしれない。香港、台湾の問題では中国が強硬に出ざるを得ないのか、もはや出ても大丈夫だと判断したのか、それとも失敗なのか、意見は分かれるだろう。
だが、言ってみれば勝負に出られるほど、アジア支配はほぼ確立したと言っていいだろう。もうじたばたしても遅いのだ。日本も現実を直視する必要がある。
ずいぶん長くなってしまったので、この辺りでやめるが、残りの怒りは、新著でぶちまけている。ご興味のある方は、今後そちらもご参照されたい(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレース予想や競馬論を語るコーナーです。あらかじめご了承下さい)。
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