これは経済学者や有識者の悪い癖である。危機であるほうが、対策、経済対策の提案、議論など、発言する機会が増える。それゆえ人々が「危機ではないか」と恐れているときは、それを煽るほうが、仕事がある、あるいは正義の味方として議論に登場するという「快感」が得られることから、危機だと思わせる節がある。メディアももちろんそれを歓迎する。
今回、GDPの速報値が発表される前に、「テレビ出演してコメントしてくれ」、という事前の依頼が私にも殺到した。念のため「どのような見解ですか」と聞かれたときに「全然大したしたことない。GDPが前期比マイナス30%になっても気にすることはない」と明快に答えていたら、すべての依頼は立ち消えになった(それでこの記事を書いている)。
嘘は「単なる嘘」だけでは済まず、高くつく
これは日本社会の悪癖だ。そして「メディアと有識者は酷い!嘘つきだ!」というだけでは済まない。この嘘は高くつくのだ。
なぜなら、この嘘に基づいて、政治家たちは政策を打つ。国民に受けるような政策を打つ。つまり、ばら撒きだ。いわゆるコロナ給付金は、必要ない人(前述の都会の無傷の人々など)にも1人10万円配られた。そのお金がアマゾンや家電量販店、さらには百貨店などにも向かい、そして株式に向かった。巷ではロビンフッダーなどと呼ばれる「にわか個人投資家」が、アメリカにも日本にも溢れている。
先日も、日比谷線の六本木駅で非常に若くて煌びやかな女性が、私のすぐ近くでバーキンに似たバックの中からスマホを突然2台取り出したので「なんだろう」と思っていたら、緑と赤の文字がフラッシュしているのが目に入ってきた。株価ボードだったのだ。
そう、これから起こることは、第1に「無駄なばら撒きによる株価バブル」だ。一時的なフローのショックなのに、FED(アメリカの中央銀行)をはじめ世界中の中央銀行が、リーマンショック以上の大規模緩和をしている。そして、金融緩和は急にやめることはできない。バブルは必至だ。いや、すでに始まっている。
1つ目の嘘が長かったが、これが第2の嘘だ。つまり今後は、デフレにもインフレにもならない。バブルになるのである。いや、もうすでに大きなコロナバブルが始まっている。この点で、わが同僚でかんべえ氏とともにこの持ち回り連載を担当している経済評論家の山崎元氏も「嘘」をついていることになるのではないか。
山崎氏は「アフターコロナはバブルになる可能性が大きい」などといっているが、すでにバブルは始まっていて、すでに佳境を迎えている。可能性が大きいのではなく、100%で、もう起きている。競馬で言えば、先週のレースの予想をしているようなものだ。
このバブルは、もう少し膨らむだろう。そして、山崎氏が最後に指摘しているように、結末を迎える。そう。もちろん、崩壊するのである。そして、山崎氏と残念ながらまったく意見が同じなのだが、肩代わりするのは、今度は中央銀行ではなく政府だ。政府の財政のばら撒きにより、すべてのしわ寄せは政府に来る。つまり、財政破綻となる。
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