「PCR検査・隔離」の膨張が引き起こす現実の問題 感染症と検査の現場から西村秀一医師が訴える

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――検査して陰性であってもその翌日には陽性になって感染が判明する可能性があることは言われていました。ですが、逆に本当に陽性でも検体そのものがダメになってわからなくなることがあるのですね。

検査数が短期間に何万件もあったら、毎日頑張っても翌日あるいは曜日によっては翌々日以降になる積み残しが生じてくる。検査会社への輸送に時間がかかり、またラボに数日「検査待ち」でおかれ、2~3日は経ってしまう。つまり、適切なタイミングで適切な人が検体を採取し、新鮮なうちに検査し、結果をプロが判断するという適切な流れでクオリティコントロールができないと、何のための検査なのかわからなくなる。

低い感度、バラバラな基準で「やってるふり」

――民間での検査が増えています。また、唾液による検体の採取とか、全自動検査システムなど、検査件数を拡大する方向で採用されています。

唾液検査について言えば、先ほど話した保存によるウイルス遺伝子量の低下は、唾液検体がいちばん起こしやすい。簡単に唾液検体を集めて大量に検査するなら、よほど素早くやらねば、偽陰性の山になる。

さらに知っておいてほしいのは、検査の方法によって判断基準がまちまちだということ。これから大きな問題になる。今までは国立感染症研究所のマニュアルに従って、地方衛生研究所が反応のサイクル数やコピー数を見ている。だが、最近は反応時間を早くしたとか、人手のいらない全自動とか、事前にRNA抽出の操作が要らないというシステムも使われ始め、これから大量の検体処理のため広まることが予想される。しかし、このシステムでは白か黒かの判定しかなく、ギリギリのところの判断で偽陽性や偽陰性が起きていることに気づかない。

また、システムによっては最低検出感度が10倍、極端な場合は数十倍から100倍も鈍く、陽性陰性の線引きも異なる。コピー数が低めの検体の場合、あるシステムでは陽性、別のシステムでは陰性ということが普通に起きる。例えば100コピー以下はすべて陰性と報告されるかもしれない。そのシステムなら、先の小学生の例は陰性との判断がなされたはずだ。

感度を下げることに反対しているわけではない。たとえば100コピー以下は生きているウイルスもいないことだし「陰性」と判断する、というなら、それを確固とした基準として統一しておく必要があるということだ。

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