「PCR検査・隔離」の膨張が引き起こす現実の問題 感染症と検査の現場から西村秀一医師が訴える

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基準の問題でいえばPCRを増やせという人たちが、よく外国での件数例を挙げる。確かに中国の各都市では今、無症状者を含め何万人単位で検査しているが、これは10人分の検体を1つにまとめて1回のPCR検査をやっていると聞く。陰性なら10人が陰性となる。そうなると1人あたりの検査に使われる検体量は10分の1になり、感度を10倍落としての検査によって陰性と判断しているということになる。それでもいいというのならば、それも1つの検査哲学だ。

しかし、こうした簡便な方法をどんどん進めると、検体の劣化も含め、1人ひとりの結果を慎重に見るのではなく、単なる「やってるふり」になっていく。

――経済団体や企業は海外出張などの際に「陰性証明」を求められるという問題があり、だから検査が必要だとしています。目的がそれですから、対外的に「やってるふり」でもいいと考える可能性は大いにあると思います。検査をビジネスとして拡大したい人の声もあるでしょう。国際的に「やってるふり」が広がるのかもしれません。

そうなら、私としては、本当に何を見ているのかわからなくなる危険性がありますよ、それこそ偽陰性だった人がウイルスをまき散らすリスクはありますよ、ということはきちんと言っておかないといけない。

本当に必要な人に質の伴った検査を

――「検査して隔離が常識」などと主張するメディアが手本にしているのがアメリカです。しかし、新型コロナ対策に資金を出してきたビル・ゲイツ氏が最近、「結果が出るまでに48時間以上かかる検査を大量にしたことは無駄だった」と語りました。また、全員が「陰性証明」を取得して参加したジョージア州での合宿キャンプで感染が広がったという事例も注目されました。

PCR検査の弱点を考えれば「陰性証明」に意味がないことは明らかだ。中国での陰性は先ほど話した程度のもので、その程度でよいというのであれば、そこで検査としてのPCRの話は終わりだ。

一方、アメリカでは検査、検査と増やした結果、また検査キットなどの資源が足りなくなってきたと報告されている。このしわ寄せは日本も含めた世界に及んでくる。PCRの機材だけじゃなくて、綿棒とか遠心管とか補助機材も不足してくる。そうすると、本当に必要な人が検査を受けられなくなってしまうことが一番怖い。

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