「ソニーらしさ」の変貌を映す経営者の目立ち方 吉田社長は新しい時代のカリスマとなれるか

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平井氏は1984年にソニー系列のレコード会社CBSソニーに入社し、その後、音楽、ゲームなど一貫してエンターテインメント分野で頭角を現してきた。ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)会長を経て、2012年4月、ソニー社長兼COO(最高執行責任者)に就任するまで、ソニーの祖業で顔でもあるエレキ(エレクトロニクス)分野に携わった経験はまったくなかった。

無類のカメラ好きでソニー製品への愛着が非常に強かったにもかかわらず、「エレキがわからない社長で大丈夫か」と就任当初は社内外から懸念する声が聞かれた。

2012年4月にソニー社長に就任した平井氏は、さっそく経営方針を発表した。しかしその内容は現事業のポートフォリオマネジメントについて説明するにとどまっていた。プロの経営者が構築した経営戦略としては、低迷し続けるソニーを立て直せるとは思えないほどの切れの悪さだった。

2012年度までに4期連続、累計約9000億円もの赤字。それに伴い人員削減、業績予想の下方修正が繰り返し行われ、平井氏に対する批判的見方は高まった。ついに、「ソニーは終わった」とまで言われた。本人も心労が重なったのか、見る見るうちに白髪が増えていった。

ゲーム事業のビジネスモデルを転換、半導体も成長

ところが、テレビ事業の別会社化、パソコン事業の売却、商品販売後も、継続的に収益を上げる「リカーリングビジネス」をゲーム、音楽、映画などのソフト分野で確立するなど相次いで改革を成功させた。例えば、ゲーム機“PlayStation4”は大ヒットしたが、“PlayStation3”の時代と異なり、売り切りからネットワークサービスで稼げるようにビジネスモデル自体を転換した。

こうしたエレクトロニクス、ソフト事業の改革に加え、CMOSイメージセンサーが世界首位の座を占めるようになり、「ソニーと言えば、半導体」という新しい看板が定着した。

2018年3月期の純利益は9162億円で、2期連続の過去最高益を更新。平井氏は「奇跡」を起し、カリスマの条件を整えた。その対価として、日本の役員報酬としては最高額の27億1300万円(2017年3月期は9億1400万円)を手にした(出所:東京商工リサーチが、2018年3月期決算の「役員報酬 1億円以上開示企業」調査)。

カリスマになっていく平井氏を支えた吉田CEOは、「やって(い)る感」「強いトップ」を演出しようとはせず、優しそうな口調も含めて、日本人的「謙譲の美徳」を醸し出している。ひいき目に見れば、格好をつけない日本人受けするトップでもある。そういう意味では、世間がイメージするソニーらしいCEOではない。一言で言えば、地味に見える「マネジメント・コントロール型CEO」である。

ちなみに、「マネジメント・コントロール」とは、経営戦略を策定し実行する役割と、各現場の管理者が行う日常的業務管理の2つの経営管理機能を橋渡しする業務である。一例としては、管理会計(経営者や各部門の管理者が経営計画や財務管理、予算の策定などを行う際、目安や指針となる会計)を実際の戦略に落とし込んでいくプロセスがある。

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