クボタ「巨大トラクター」で狙う欧米市場の攻略 過去最大の農機で世界首位の企業に真っ向勝負

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クボタにとって、今回のM8発売は欧米における本格的な農業市場攻略のあくまで第一歩だ。「アメリカで畑作用を本格的にやるなら、将来的には500馬力クラスのトラクターだって必要になってくる。サイズのラインナップや価格展開も増やして、農機業界のトヨタになりたい」。北尾社長はさらなる大型化にむけた意気込みをそう語る。

今回はスピードを重視して、自社生産ではなくカナダの中堅メーカー、ビューラー社からOEM供給を受ける形を取ったが、大型でも内製化に向けた準備を進めている。今後の開発を見据え、約73億円をかけ欧州に100人規模の開発拠点を整備する。車体やエンジン、トランスミッションなど、欧米の畑作市場攻略に必要な大型トラクター開発の一切をこの欧州の新開発拠点が担う。

すでに農機にも使用できる300馬力のエンジンの開発が進んでいる。2023年の発売を目指すこのエンジンは外部の建設機械メーカー向けに供給するが、農業機械にも転用が可能だといい、さらなる大型化への布石になる。

不退転の決意で戦う

大型化と並ぶもう1つの戦略が、インプルメントの自社展開だ。インプルメントはトラクターにつけて使用する作業用機械で、作業目的に応じて付け替える事で1台のトラクターが何役をもこなす。農機メーカーでも多少の展開はあるが、インプルメントは専業のメーカーから農家が別途購入するのが一般的だった。

クボタは2012年にノルウェーのインプルメントメーカーであるクバンランド社を約220億円で買収。さらに2016年には、アメリカでも500億円近くを投じてGP社を傘下に収めており、作業機インプルメントとトラクターの一体販売で畑作市場の攻略を目指している。

クボタの2019年の農機・エンジン部門の売上規模は約1.2兆円で、世界2位のCNHインダストリアルの農機・エンジンの売り上げとはすでにほぼ肩を並べている。M8をテコに欧米市場で販売を積み増し、2位の座を確立することを狙う。

「かつて社内では、ジョンディアの尻尾だけは踏むなと言われていた。あまりに強くて、怒らせたら大変なことになるぞと。しかし、当社もトラクターの大型化を進め、これから農業用途での本格的な競合が始まる。不退転の決意で戦っていく」(北尾社長)

果たして、アメリカ、欧州で農業用の大型トラクター市場を攻略できるかどうか。クボタの農機事業の成長はその成否にかかっている。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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