早稲田政経卒「発達障害」26歳男が訴える不条理 「高学歴なのになぜバカなんだ?」と罵倒される

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ソウスケさんは2回にわたって編集部に自分の話を聞いてほしいというメールを送ってきた。どうしてそこまでして取材を受けたかったのか。

「1つは早期発見の大切さを訴えたかったんです。もっと早くわかっていれば、最初から障害者雇用で働いていました。そうすれば二次障害で苦しむこともなかったのではないか。発達障害はクラスに1人、2人はいると言われてますから、(診断の際の参考にされる)ウェクスラー知能検査を義務化するべきだと思うんです。

もう1つは、発達障害は福祉の狭間に陥りがちだということ。もうすぐ(マンション清掃とは別の)清掃会社に障害者雇用枠で就職することが決まっていますが、手取りは月12、13万円ほど。障害年金は申請しましたが、『該当しない』と言われました。自分は一般雇用で働くのは無理。かといって障害者雇用の給料だけでは生活できません。せめて副業ができればいいのですが、障害者雇用では副業は認められないことが多いんです」

またしても隙のない、説得力のある答えだった。

発達障害増加の背景にある「不寛容」

これは持論だが、昨今大人の発達障害が増えたといわれる背景には、世間や会社組織が「異質であること」「非効率であること」に不寛容になったことがあると思う。

本連載で発達障害の人の話を書いても、「周りにいたら気持ちが悪い」「発達障害の上司を持つほうの身にもなってほしい」といったコメントが寄せられる。居場所があって生きづらさを感じなければ、わざわざ診断を受ける必要はないという人も少なくないだろう。しかし、現代社会において「ちょっと変わった人」の居場所は確実に減った。

これに対し、ソウスケさんは「長年、“健常者”の側だったのでそういう人たちの考えも理解できます。自分も何か価値ある仕事ができるわけではありませんから。将来ですか? 発達障害は遺伝も関係しているという説もあるんですよね。今後、自分が家庭や子どもを持つことはありません」と言う。

ソウスケさんが絶望の崖っぷちから生還しつつあることはうれしいことだ。一方で私は20代の若者が「結婚はしない」と言い切るしかない社会を思う。ソウスケさんの話はどこまでも、やりきれないほど理路整然としていた。

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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