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妻と子ども4人、夕食は「すいとん」だけ
ゆで上がったばかりのすいとんが皿の上に並ぶ。「やったー!」。歓声とともに四方から、真っ黒に日焼けした子どもたちの腕が伸びる。肉や野菜が入った汁物ではなく、文字どおりすいとんだけなのだが、子どもたちは味噌だれにつけて食べるのがお気に入りだ。
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小麦粉1キロ分の団子はあっという間になくなった。子どもは幼稚園から小学4年生までの4人。父親のシュウゴさん(仮名、36歳)は複雑な表情でこう話す。
「今晩の夕飯です。おかずですか? ありません。すいとんだけです。1週間の食費は1万円と決めているので。よろこんで食べてくれるのが救いですが、考えてみると(子どもたちのほうから)『すいとんを食べたい』と言われたことは一度もないですね……。子どもたちの栄養は学校の給食が頼りです」
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九州のある街で暮らすシュウゴさんは、妻と4人の子どもたちの6人家族。妻は膠原病を患っているので働くことができない。シュウゴさんは正社員のシステムエンジニアで月収は30万円ほどだが、妻の看病に加え、家事や育児もこなさなくてはならないので出社できるのは所定労働時間の7割ほど。遅刻や早退による賃金カット分や家賃、保険料などを差し引くと、手元には15万円ほどしか残らない。
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