6人家族で「1週間の食費は1万円」極限の食生活 野菜はほとんど買えず「鶏胸肉」がたまの贅沢

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自動車や病院の電子カルテなどのプログラミングを手掛けた経験のあるシュウゴさんはシステムエンジニアとしては引く手あまただ。

ただ、戸建ての社宅が利用できることや、不安定な勤怠への理解といった“条件”をクリアしようと思うと、時に転職には苦労した。社宅の明け渡しが1週間後に迫っても、次の仕事が見つからず、ガスは止められ、コメもなくなり、相談に行った自治体の担当者から、子どもたちを一時的に児童相談所に預けるよう提案されたこともあった。

「なんとか転職先は見つかりましたが、家族にとって一番の危機でした。このときは子どもたちと離れ離れにならなくて済むように、家族単位で利用できるシェルターがあればいいのにと思いました」

シュウゴさんは「世の中に私たちのような家族がいることを知ってほしい」というメールを編集部に送ってくれた。私は、シュウゴさん一家が直面している現状以上に、彼らがなぜ公的な福祉サービスを利用しないのかということを知りたかった。日本には不十分とはいえ、生活保護や社会福祉協議会による貸し付け、生活困窮者自立支援といった制度がある。膠原病に関しては障害者手帳の取得や障害年金の受給といった手立てもある。

家族のためにというなら、そうした制度の利用は一通り検討したのだろうか。

生活保護の利用につきまとう「心理的ハードル」

シュウゴさんによると、社会福祉協議会の貸し付け制度は一度利用したことがあり、返済も終えた。ただその後は何度相談に行っても「『あなたの収入では返済は無理』と言われ、生活保護に回されました」という。

生活保護は複数の自治体で相談したが、いずれも申請には至らなかった。利用を諦めた一番の理由は「担当者から、(扶養の意思を確認するため)妻の実家に『問い合わせの手紙を出します』と言われたこと」。シュウゴさんは妻の両親には個人情報の閲覧を規制する措置をとっていることを説明したが、担当者は「ルールなので」の一点張りだったという。

車を手放すことや、自己破産を“条件”として提示されたことも、利用を思いとどまった理由の1つ。加えて心理的なハードルもあった。シュウゴさんはシステムエンジニアとして病院で働いていたことがある。生活保護利用者は医療機関では自治体が発行する医療券を使うので、医師や看護師は、彼らが生活保護利用者であることがわかる。

「生活保護の人は陰で医師や看護師にいろいろ言われるんです。『あのおじいさん、生活保護なのにコードレスのイヤホン使ってる』とか、『あの人、生活保護なのにブランドバッグ持ってる』とか。何かというと『生活保護なのに』って……。だから、できれば生活保護は避けたかった」

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