――コロナ禍の対応で大学も大変ですが、要はこうした変化をチャンスに変えていけるかですね。
出口 その意味で今回のコロナ騒ぎの中で、最も反省すべき点は秋入学の見送りだと思っている。素直に考えたら、今一番不安に思っているのは高校3年生だろう。僕が政府なら来年から秋入学をやると宣言する。交付金を減らすといえば、大学は全部秋入学に対応するだろう。そして高3には、「春入学、秋入学とチャンスは2回あるから、安心して勉強してや、心配せんでええで」と言えば済む。
小学校から高校までは5年くらいかけて調整すればいい。時間軸を分けて考えればいいのに、メディアを含めて秋入学といえば、小学校から高校まですぐに一律にすべて移行しないといけないといった議論になってしまった。先ほど話したリモートワークと同じで、コロナ禍によって秋入学の機運が生まれて必要条件が整った。
しかし、政府やメディアが大きな方向性(十分条件)を示さなかったため、そうした好機は生かされなかった。やはりリーダーやメディアが改革の未来図を描かないと、十分条件は成り立たない。秋入学は、それを示す証左だ。
なぜ今が重要な準備期間なのか
権丈 出口さんも私も歴史好きだから、われわれにとって今のような新型コロナへの社会様式の調整は歴史の一過程に見えてくる。いずれ来る次の世界に頭を巡らせている。そのときの準備をどう進めるのか。出口さんのリーダーシップやビジョンの話は全部こことつながっている。
出口 歴史を見ると、滅んだ王朝は山ほどあるが、それらは新しい時代に対する準備をしていなかったとか、危機感がなかったわけではまったくない。それなりにみんな改革しようとしていた。ところが、多くはそのスピードが遅かったり、将来に対するビジョンが曖昧だったりしたため、世界の流れに取り残されて滅んでしまった。
極論すれば、日本に陽はまた昇るのか、あるいはこのままズルズルと衰退していくのかは、そのときのリーダーやメディア、市民の動きなど偶然の寄せ集めがどう作用するかで決まってくる。つまり今は、ものすごく大切な時期だと強調したい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら