2018年7月にサービスを始め、14万件以上の診断データが蓄積されたこともあり、2020年5月末にブランドを「リベルタ パフューム」へリニューアル。すると、注文が殺到し、リリースから3日で約1000本の在庫が消えたという。この間、約5万5000人がホームページを訪れ、新たに15万件以上の診断データも集まった。
現在、1日の注文数は前年比5倍(旧ブランドとの比較)。8ml(3480円税抜)が最も売れており、気分などの設定を変えて診断しなおし複数注文する人も多いという。
2年ほど前からインターネットでオーダーメイドできるシャンプーや化粧品が増え注目が集まっているが、これもそんな「パーソナライズ化」への関心の現れだろうか。山根さんも「若い世代の香りへの関心の強さや『私だけの香り』へのこだわりを改めて感じる」と語る。
しかし、香りのパーソナライズ化はそう簡単ではないそうだ。例えば「木」の香りでリフレッシュされる人もいれば田舎のおばあちゃんを連想して懐かしむ人もおり、感情のふれ方はバラバラ。視覚や聴覚に比べ嗅覚の研究は進んでおらず、「この場合はこの香り」と規則性を見出すのは非常に難しいそう。まだまだ人の感覚が頼りになる部分が大きいため、ワークショップなどでの対面調香の経験に基づきアルゴリズムを作ったという。購入者の声も重視しており、随時反映させてアルゴリズムと香りのアップデートを行う。
また、14タイプの香りをベースとし、診断結果に応じさらに調整した香りを提供しているが、この各ベースを構成する「基本パーツの香り」の作成を顧問の岸田茂雄さんに依頼している。
岸田さんは、フランスの大手香料会社マンの日本法人で長年調香師として活躍し社長まで務めた香りの専門家。この経験を生かし日本人好みの調香をしている。
香りは気候や食べ物など地域性や文化と深い関連があり、特に湿度の高い環境で暮らす日本人は、カラッとした気候に合う海外製の厚みのある香りを重く感じる傾向にあるという。そのため「軽やかさや透明感」を意識して香りを仕上げている。
「香りのリテラシー」が高い世代がやってきた
確かにメインベースの香りはそれぞれ個性が違うのに共通してみずみずしい。日本では海外製の香水がメインで流通する。そんな中、母国の感性で作られた香りは、自己表現にこだわりたい若年層には新鮮に映るのかもしれない。
薬局でも色々な香りの柔軟剤やルームフレグランスを買えるようになった昨今。若年層はそんな香りが身近な環境で育ち、扱い方次第では「香害トラブル」が生じることも上の世代を見て学んでおり、「香りのリテラシーが高い」(山根さん)そうだ。
香りに慣れているからこそ探究したいのか、独学で香りについて勉強する人も多いという。「ニーズは強く、10年ほど前から香りで事業を始める若手起業家も増えてきた。これを機に日本の香り文化が育っていけば」と、香り業界に長年身を置く岸田さん話す。
今、他にもプロが好みに合わせブランド香水を選んでくれたり、AIを活用して最適なアロマを提案してくれたりと、続々と「自分に合った香り」をネットで提供するサービスが出てきている。日本の香水市場規模は約400億円。大きな伸びは期待できないといわれてきたが、ミレニアル以下の世代がこの市場を大きく変える鍵となるかもしれない。
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