90歳を過ぎると、ランチをともにするのも困難になってきましたが、それでも家族は集まり続けました。平日は息子である、父と兄弟、そして私を含む孫4人が代わる代わる少しの時間でもいいから、と彼女の様子を見に行っていました。みな、できるかぎりのことをしようとしていたのです。
それでも、メメがプロの助けを必要としているのは明らかでした。息子が自らの母親の入浴などを手伝うのは体力的だけでなく、精神的にも大変なうえ、入浴を含めたあらゆることへの対処法はヘルパーの方がよく知っているからです。
彼女自身も、自分が大好きなアパートで1人暮らしを続けたいという思いがあり、私たちもその希望を叶えるために、できるかぎりのことをしたいと思いました。そこで私たちは、パリ市を通じてある団体を見つけ、朝と夕方に介護士1人、週に1回看護師に来てもらうようにしたのです。
子どもと連絡を取っていない人も
彼女たちは素晴らしい仕事をしてくれました。晩年、メメは歩くことができず、目も見えなくなっていましたが、それでも彼女の心は“パーフェクト”なままでした。おしゃべりが大好きで、若い頃に習った詩を私たちに暗唱してくれました。
介護士を頼んでからも、私たちは従来通りメメを訪ね、その日の話をしたり、歌ったり、愛を語り合ったりしました。そして、最愛の祖母は99歳4カ月でその生涯を終えるまで、自らのアパートで1人暮らしをすることができたのです。100歳を迎えられなかったのはとても残念でしたが、私たちは最後までメメとすばらしい時間を過ごせました。
メメは1人暮らしでも家族に囲まれていましたが、日本と同様、フランスでも高齢者の孤立は問題になっています。前述のCCNEの調べでは、1人暮らしの高齢者の5割は友人や社会とのつながりがなく、4割は子どもと連絡を「とっていない」「ほぼとっていない」そうです。
一方で、フランスでは高齢者施設に入居する人が増えているものの、本人の意思に反して入れられている人が少なくなく、独立性や自主性を奪われたこうした人たちがうつに陥るケースもあるとしています。
こうした中、独居高齢者を支援する制度があります。2015年の65歳以上の生活費は1カ月2094ユーロ(約26万円)と高額ですが、2005年以来、高齢の低所得者を支援する連帯手当があります。
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