フランス人の多くはアパートを所有していますが、その中には低所得者や年金受給者も少なくありません。そうした人でもアパートを失わずに済むように、2002年にAPA(Allocation personnalisée d'autonomie、個人型自立手当)という制度が作られました。
この手当ては、県(フランスにおける地域単位)によって異なりますが、基本的には医師、介護士、看護師、管理者で構成されるチームが高齢者のニーズを評価します。この手当は2020年には140万人が対象となっています。
60歳以上の独居高齢者がアパートの空き部屋を無料、あるいは、格安で学生(18歳〜30歳まで)に貸し出すサービスもあります。高齢者と学生を同居させる最大の目的は、高齢者の「見守り」ですが、これによって、高齢者は食事を共にしたり、話をする相手を確保できますし、学生は生活費を抑え、食事を作る手間が省けるなど双方にとってメリットがあります。もともと高齢者の孤立を防ぐために非営利団体が始めたサービスですが、たとえば留学生にとってはフランスの生活を知るうえでとても役に立つのではないでしょうか。
生前にアパートを売却し、「年金」受け取る
また、アパートの所有者が生前に自分のアパートを売り、そこに住みながら購入者から月々“年金”のような形で受け取るというユニークな「viager(ビアジェ)」と呼ばれる制度もあります。受け取れる金額は所有者の年齢やアパートの価格、平均寿命をもとにした平均生存期間などによって変わりますが、これによって所有者は死ぬまで自身のアパートに住めるだけでなく、月々一定の収入を得ることができるわけです。
買い手側からすると、自分がいつそこに住めるのかわからないので、ある意味チャレンジですが、普通にアパートを購入するより比較的安いうえ、お気に入りの物件がある場合は、早めに手をつけられるという利点があります。
この制度は1804年にナポレオンによって導入されました。122歳まで生きた世界最高齢のジャンヌ・カルマンの有名な例があります。彼女が90歳の時にアパートを売却した時、買い手はいい取引をしたと思っていました。ところが、彼女はアパートの価値をはるかに超える30年間の年金を毎月受け取り、買い手はこのアパートに長く移ることができませんでした。もちろんこれは例外的なケースですが……!
新型コロナウイルスで外出規制が続いた時には、隣人同士の連帯感が高まり、近所の人が1人暮らしの高齢者の買い物を助けたり、これまで以上にコミュニケーションをとったりする場面も多く見られました。
自立性を失うということは誰にでも起こりうること。その時に家族が全面的にサポートできればベストですが、家族であっても介護は物理的、精神的に大変な時がありますし、誰もがつねに頼れる家族がいるわけでもありません。こうした時に頼りにできる公的、あるいは民間支援があることは、「年齢を重ねても独立していたい」フランス人にとってはとても重要なことなのです。
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