説明が上達したい人に知ってほしい数学的思考

連立方程式を解くことがどう人生に役立つか

しかし先ほどご紹介した数学コトバはいかがでしょう。機械ではなく人間が使うものです。日常生活において、ビジネスシーンにおいて、使うシーンはいくらでもあるでしょう。

例えば商談。なぜそのサービス(商品)を推奨するのか。なぜそれを購入するとメリットがあるのか。筋道を立てて説明することが求められます。その商談において上述の5つの言葉を一度も使わずに成約まで導けるのでしょうか。よほどのカリスマ営業マンでなければ無理でしょう。そもそもそんなカリスマがいるのかどうかも疑問ですが。

あるいは会議。あなたの周囲にも「要は何が言いたいの?」と突っ込みたくなるような話をする人が1人はいるのではないでしょうか。もしその人物が数学コトバを使えるようになったらどう変わるでしょう。主張が明確で、そこまでの論述もわかりやすく、説得力ある話し方になるのではないでしょうか。

ではどうすればこのような言葉の使い方ができるようになるのでしょうか。「明日から使ってね」と言ってすぐにそれができるなら私のような教育者は必要ありません。もちろん現実はそんな簡単なものではない。このような記事にすれば誰もが「当たり前」「簡単」と思うことですが、それが実際にできるようになるのは簡単ではないのです。

例えば次の連立方程式を解きます。

X+Y=10
X―Y=2

数学に慣れた方なら1分もかからず、(X、Y)=(6、4)という正解を導くでしょう。でも重要なのはその正解ではありません。その答えが間違いなく正しいことを説明するための言葉の使い方をトレーニングするのです。

X+Y=10
X―Y=2

すなわち

2X=12

ゆえに

X=6

ゆえに

6+Y=10

ゆえに

Y=4

以上より

(X、Y)=(6、4)

「どう解くか」というよりは「どう説明するか」   

「どう解くか」は重要ではありません。むしろ「どう説明するか」が重要です。そもそも学生時代の数学には必ず正解があります。教えられた作業を通じてその正解を導けばマル(成功)となる。この行為にいったい何の意味があるのでしょう。計算問題がお好きな人には申し訳ありませんが、はっきり申し上げて無意味です。まるでプログラミングされた通りに処理を行って「解」を導くだけの機械と同じ。なぜ機械にやらせればいいことを人間が必死に勉強しなければならないのでしょう。

次ページ「なぜその解になるのか」を説明するシナリオを考える
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