目をつけられた「TikTok」何がマズかったのか 国際化しても、中国共産党の影は消せない

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海外進出するのであれば、アメリカから距離を置き、中国政府の外交戦略に従って、東南アジア、中東、アフリカなどに投資すべきだ——。中国のベンチャーキャピタル、戈壁創投(ゴビ・パートナーズ)で香港拠点のパートナーを務める唐啓波(チボ・タン)氏は、中国のIT企業に対し、以前にも増してこう助言するようになったという。

「難易度の高い海外市場に挑戦したいというのであれば、それはそれで構わない。ただ、何かしらの影響や追加のコストは避けて通れない。今後、海外進出を目指す中国のテック起業家は、このことを認識しておく必要がある」とタン氏。

ある起業家は先日、中国のテックブログ「Huxiu(虎嗅)」でバイトダンスが置かれた状況について匿名でこう述べた。「アメリカのビジネスを失えば、グローバル戦略の半分が吹き飛ぶ」。

「フェイスブックによる盗用と中傷」

マイクロソフトによるティックトックの買収交渉の継続をトランプ氏が容認するかどうか不確実な状況にあった8月4日、バイトダンスは深夜に中国で声明を出し、グローバル化に対する意欲を改めて表明した。

「当社は想像を絶する数々の困難に直面している」。声明は緊迫した地政学的環境や文化的な衝突に加えて、「フェイスブックによる盗用と中傷」にも言及している。このような声明に競合他社に対する直接的な批判が盛り込まれるのは珍しい。

フェイスブックは傘下のインスタグラムで、「Reels(リールズ)」と呼ばれるティックトックのような短編動画機能を展開し始めた。フェイスブックの最高経営責任者(CEO)、マーク・ザッカーバーグ氏は、過剰な規制でアメリカのIT企業が弱体化すると中国の競合サービスが世界に広まり、自分たちとはまったく異なる価値観が世界に輸出されるようになる、といった主張を繰り広げている。フェイスブックはバイトダンスの声明についてコメントするのを拒んだ。

バイトダンスのチャン氏にとってティックトックをめぐるトランプ政権との衝突は、政府との関係を学ぶ痛い教訓となった。だが、このような教訓を味わったのは、今回が初めてではない。

チャン氏は、テック起業家の中でもオタク的なタイプに属する。大学ではコンピューターをいじくっていた。過去のインタビューを見ても、アルゴリズムや情報の流れについて語っているときが最も生き生きしている。最近では『アトランティック』誌に対し、共産党員ではないことを明かしている。

自分はメディアではなくテック企業を経営しているのであって、コンテンツについて自らの判断を押し付けるべきではない——。チャン氏は長年、こう語ってきた。ザッカーバーグ氏に倣った発言といえる。

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