目をつけられた「TikTok」何がマズかったのか 国際化しても、中国共産党の影は消せない
ティックトックがアメリカで大ヒットすると、中国政府を刺激する可能性のあるコンテンツが検閲されているのではないか、といった懸念が浮上した。ニューヨーク・タイムズなどのメディアは昨年、CFIUSがミュージカリーの買収を調査していると報じた。アメリカの政治家からも、アメリカの選挙に介入する道具として、ティックトックが中国政府に利用される可能性について懸念の声があがるようになっていた。
アメリカからの圧力が強まる中、一部の投資家や顧問らはチャン氏にティックトックとバイトダンスのつながりを薄めるよう忠告した。ここには、ティックトックの企業構造や法的な枠組みを変える案も含まれていた。
ところがチャン氏は大規模な再編ではなく、人事の刷新で対処する道を選んだ。同氏は今年春、中国におけるバイトダンスの経営陣を入れ替え、自身はヨーロッパ、アメリカ、その他の市場に対し、個人的にこれまで以上に多くの時間とエネルギーを振り向けると語った。
5月には、中国におけるウーバーの元幹部で、バイトダンスの世界進出を監督していた柳甄(リュウ・ジェン)氏が退社した。さらにティックトックのCEOには、朱駿(アレックス・チュー)氏に代わって、アメリカのウォルト・ディズニーで長年幹部を務めていたケビン・メイヤー氏が就任した。
その一方で、バイトダンスはワシントンでのロビー活動にも力を入れ始めた。ティックトックの忠誠心は中国ではなく、アメリカにあるということを伝えるためだ。ロビイストは議員との会合で、ティックトックの動画が軽いノリの、お気楽なコンテンツであること、そして人気動画の多くがアメリカ在住者によるものである事実を強調した。
だが、トランプ政権が攻撃の手を緩めることはなかった。トランプ氏が6月にオクラホマ州タルサで開催した選挙集会には空席が目立ったが、これについてティックトックの利用者は、欠席する前提で大量に席を予約するという悪ふざけが成功したと主張した。7月上旬には、ポンペオ国務長官が国家安全保障上の懸念を理由にティックトックを利用禁止とする案を触れ回るようになっている。
トランプの逆鱗に触れた利用者の悪ふざけ
マイクロソフトによると、それから数週間と経たないうちに、ティックトックのアメリカ事業買収についてトランプ氏からゴーサインが出たという。CFIUSはこれに先立ち、バイトダンスに売却を命じる決定を下していた。
チャン氏はバイトダンスの従業員に宛てた手紙で最近の騒動に触れている。だが、その書きぶりを見ると、敵対的な国際政治の力によって会社が存亡の危機に立たされているというよりは、技術的な問題が生じただけ、といったメッセージを発しているような印象を受ける。
チャン氏は、こう記している。アメリカの懸念に対処するために技術的な変更を行う意思があることを繰り返し訴えてきたにもかかわらず、売却命令が下されてしまった。「この決定には同意できない。なぜなら、当社は利用者のデータの安全性、プラットーフォームの中立性と透明性を保証することに常にこだわってきたのだから」。
(執筆:Raymond Zhong記者)
(C)2020 The New York Times News Services
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