コロナで疲弊する医療者を救う手立てはあるか 子宮頸がんの予防が進まない現状にモノ申す

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子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)という、割とよくあるウイルスの感染が原因です。感染経路は性的接触と考えられていて、性交渉の経験がある女性のうち50~80%は、HPVに感染していると推計されています。そのうち一部の女性が子宮頸がんを発症します。

これを予防するためのHPVワクチン(子宮頸がんのワクチン)は大きいインパクトがありますが、厚生労働省は2013年から積極的な接種推奨を中止したままの状態です。積極的に推進されていないため認知もされていない。そのため接種しない人が多く、副作用が怖いというイメージもあります。

子宮頸がんのワクチンは希望すれば接種できますが、保健所に自分で行かないと定期接種の紙をもらえない。保健所に行っても、「これを打つ人は今いませんよ」「本当に打つんですか」と言われて、希望者が接種するまでのハードルが高い。そのような行政や医療機関での心折れる反発があるため、接種率は今1%を切っています。

日本の政策はエピソードベースが多い

村井:今のお話を伺って感じるのは、この国の政策はエビデンスベースであまり動かない。エピソードベースであることが多いですね。

:例えば子宮頸がんで子宮を失った人が、つらい病気であるということを発信すれば情勢は変わるかもしれません。ただ、子宮頸がんはウイルスで発症するガンのため、「誰かからウイルスをもらったあなたの責任なのでは?」「検診にちゃんと行かなかったからでは?」というような、患者が自己責任論で責められてしまう事例が相次ぎ、患者さんからの声の発信がほとんどなくなってしまったんです。

村井:なるほど。 ただ、患者団体の方は子宮頸がんのワクチンの積極的な接種推奨へ反対運動をされていますよね。そうした中で進めようとすると、メディアも含めて「子宮頸がんのワクチンを打ったことによって、こんなことになってしまった」という事例がどんどん表に出てくる。子宮頸がんワクチンの積極的な接種推奨を進めるには、エビデンスベースを徹底し、現状と取るべき解決策をよりわかりやすく世の中に伝えていくことが必要ですね。

:子宮頸がんワクチンの反対を大きな声で騒いでいる患者団体はほんの一部で、子宮頸がんワクチンの復活を望む方も多くいると思います。

月曜日の昼間から霞が関や永田町でロビーイングできる団体が世論なわけではありません。声に出して言いたい、言えないけどあえて意見を言わない、その大多数の国民もいます。そこをどうやって拾い上げていくのかというのが大事です。

村井:サイレントマジョリティーの方の意見を吸い上げることは重要ですね。とくに、エビデンスがしっかりしている政策課題であれば、あとはそれをどのように実現するかは、政治行政の覚悟とコミュニケーションの問題ですね。

(構成:二宮 未央/ライター、コラムニスト)

中室 牧子 慶応義塾大学総合政策学部教授

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なかむろ まきこ / Makiko Nakamuro

1998年慶応大学卒業。米コロンビア大学で博士号取得(Ph.D.)。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て、2013年から慶応大学准教授、19年から現職。専門は教育経済学。

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