在宅勤務で潰れる人と躍進する人の決定的な差 スランプや孤独、ストレスを乗り越えていくには

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在宅勤務で孤独になる人とそうならない人の違いは、ひとつは趣味を持っているかどうかというところもありそうです。在宅勤務になって時間が自由に使えるということになれば、趣味の時間も捻出することができます。(中略)。
将来定年退職を迎えた後、毎日が日曜日という状態になります。そうしたときに急に趣味を始めたとしても、取り組める趣味の範囲が限られます。音楽などは、それなりの練習が必要で、定年後に急に始めたとしてもなかなか続かない可能性もあるでしょう。こうした将来を見据えて趣味を増やしておくことも重要なのです。(191〜192ページより)

こうした趣味は仕事にも好循環をもたらす。たとえば、そのひとつが「人脈」だ。利害関係のない趣味の交流を通じ、いろいろなチャンスがめぐってくることも考えられるということである。

小山氏は文化庁の「日本遺産」というプロジェクトに関わっているが、それも能の稽古の仲間からの紹介だったという。初めて会う人とも、趣味の話で盛り上がれば距離がグッと近づくわけだ。

もうひとつは、活躍のフィールドが広がるという利点。事実、「日本遺産」のプロジェクトに関わったことをきっかけに、「文化財を活用した地域活性化」というテーマで研究することになったことから、京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)の博士課程に進学したというのだ。

そうやって研究しているなか、今度は「地域の人々の創造性をどう引き出すか」というテーマが浮かび、それが現在の本業であるイノベーション・コンサルティングともつながっていったそうだ。

同じ一人の人間が興味を持つことなので、根底ではテーマ同士の深いつながりがあり、それが見えてくると、相乗効果で研究と実践が進んでいきます。趣味が仕事につながるのです。(193ページより)

このように、「たかが趣味」と侮れないような展開を見せることがあるわけである。それを実感しているからこそ、これからの働き方においては、仕事と趣味の境界がどんどんなくなっていくだろうという実感を小山氏は持っているという。

ネガティブなことばかりではない

毎日会社に出勤する生活を長く続けてきた人が、まったく違うライフスタイルである在宅勤務と取り入れるとなると、最初のうちはプレッシャーを感じることになるかもしれない。

しかし、それも考え方次第だ。いままでの生活習慣に執着していれば、違和感を覚えるのは無理もない話。だが、コロナの影響で社会は変わったのだ。好むと好まざるとにかかわらず、それは事実だ。

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だとすれば、小山氏のいうように生き方や働き方を変えればいいのだ。しかも、人間は慣れるものだ。最初は不安かもしれないが、時間が解決してくれる部分も少なからずある。

つまり、続けていればいつか(それも、近い将来には)きっと、新たな生き方を身につけることができるに違いないのだ。考え方次第だということで、必ずしもネガティブに、悲観的に受け止める必要はないのである。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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