政府は「新型コロナの恐怖」政策を見直すべきだ 冷静な情報発信で萎縮を解消し日常に戻ろう

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「GoToトラベルキャンペーン」は恐怖感を払拭しないままの中途半端な企画で、結局、東京を除外するなど、頓挫した(写真:REUTERS/Issei Kato)

いちばん重要なのは、正しいステップを踏んで国民の行動を変えていくことである。この点で失敗したのは、最近の「GoToトラベルキャンペーン」である。落ち込んだ消費を喚起するという意味で、GoToトラベルキャンペーンの発想は非常に良かった。しかし、手順面で致命的な間違いを犯してしまった。

本来は、①新型コロナは恐怖のウイルスではない、②感染者が増えるのは心配ない、この2つを国民に納得させたうえで、活動再開を促すことが必要であった。ところが政府は、①と②を飛ばして、いきなり活動再開に進んでしまった。国民の大半が恐怖の新型コロナと思っているのに、皆さんそろそろ旅行しましょうと言われたら、感染拡大を恐れる国民や自治体が猛反発するのは当然の反応である。

「指定感染症」を解除、冷静な分析と情報発信を

このように、国民の間に根づいた萎縮心理を解消するのは、極めて困難な作業である。しかし、将来にわたる深刻な経済的・人的損失の発生を回避するには、社会・経済を正常化させる取り組みに早急に着手すべきだ。そして、新型コロナに対する国民の認識を大きく変えるために、政府とマスコミが積極的に働きかけることが求められる。

冒頭、日本の死亡率が低いのは幸運だったかもしれないと書いた。いま新型コロナに関して取り組むべき課題が2つあると思う。1つめは、幸運の理由を調べること。2つめは、理由はさておき、幸運を所与としたら、いま何をすべきかを考えること。いつ答えが出るかわからない1つめの問いにこだわるより、国民がいちばん必要としている2つめの問いに全力で取り組むべきではないだろうか。指定感染症の解除を早期に行い、日常生活を取り戻す努力が必要なのである。

依然として未知のウイルスとはいえ、データの蓄積を通じてある程度実態が明らかになってきた以上、冷静に正しく恐れることが大事だと思う。わが国では、年齢別・リスク別の対策を講じることで、新型コロナ前に近い生活を取り戻すことは可能である。第1波の経験をしっかり分析したうえ、日本独自のウィズコロナ社会を設計すべきだ。さらに、わが国で解明された科学的エビデンスや、それを基に構築された社会的取り組みについて、世界に向けて積極的に発信していくことも必要である。

枩村 秀樹 日本総合研究所 調査部長・チーフエコノミスト

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まつむら ひでき / Hideki Matsumura

日本総合研究所 調査部長・チーフエコノミスト。1992年東京大学経済学部卒業、住友銀行入行。1995年日本経済研究センターに出向。韓国・タイ経済、日本経済、少子高齢化・産業構造変化などを担当。2014年内閣府 経済財政諮問会議 民間議員室に出向。2016年日本総合研究所マクロ経済研究センター所長、2019年7月から現職。

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