ワルの息子と母親を救った「先生のある一言」 自分の心を閉ざしてしまう現代の一見いい子
そんな乾ききった心で何とか生きていた親子にとって、“学校関係者で味方がいる”と知ったことはとても大きな意味を持ったそうです。
その一件以来、ワルで評判の生徒たちは保健室登校をするようになり、日常で思うこと、傷ついたことなどを少しずつ口にするようになっていったと言います。
「思春期だったから何に対してイラついてんのか……というか全部のことにイライラしてたんだと思うんだけど、唯一先生だけは俺らのこと怖がってない大人でしたね。むしろ校長室の一件から先生の方が怖かったですよ(笑)」と。
保健室へ行けば、ほどよい距離で「今日はなんかあった?」とだけ聞き、「別に」とだけ答えれば、「あんた今ヒマだったらちょっとこれ手伝ってよ」と、さりげなく居場所をつくってくれていたと言います。中卒で仕事をすることを決めてからも何度か相談の連絡も取っていたとか。
「先生も昔随分苦労してきたって話を聞きました。こんな私のことも“立派じゃないですか”といつも応援してくれてね。本当に救われた思いなんです。生きていていいのかさえわからなくなることも多かったですから。おかげでこいつも私も丸くなりましたよ。こうして一緒に先生にお線香あげに来れるのも幸せです」
30年も経って、いまだにそう言っていただけるのは、母も養護教諭冥利に尽きます。
見えづらくなった子どもたちの心
「こちらこそいいお話を聞かせていただき本当にありがとうございました」と筆者はお2人に頭を下げ、母がよく言っていた言葉を思い出したのでお伝えすることに。
「そうそう! うちね、すぐそこが国道でしょ。夏に私が帰省するとね、昔ほどじゃないけど、いまだに暴走族が何台かすごい音出しながら走っていくんですよ。そのたびに母がね、軽く目を閉じて“あぁ~癒される”って言っていたんですよ(笑)」
これには一同大笑い。
母が退職する頃の学校事情というのは、この親子の激動の時代と180度環境が変わっていました。学校で大暴れする生徒の時代から一転、生徒がみんな大人しくなってしまったのです。
一見、「いい子ばかりでいいではないか」と思うかもしれませんが、実はそうではないのです。先生どころか、親も知らないうちにひっそりと自殺をしてしまう、すべて自分の心に閉ざしてしまい、心を病んでしまう生徒が増えているというのです。おとなしい子どもは大人にとっては都合のよい子であるかもしれませんが、こんなつらいことはありません。
「昔の子どもたちはわかりやすい形で主張があった。今は本当にわかりにくく見えづらいからそれが怖い。だから暴走族の音を聞くと、癒される」
今の時代では、「目立たないものほど気にかける」という気持ちが、見守る大人に必要なのかもしれません。
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