「家政夫ナギサさん」に見る女性たちの今の本音 何でもできる男性家政夫に求めているのは

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「家事は、女性たちの足かせになっていると思います。女性は家事ができなければいけないもの、しなければいけないもの、あるいはやって当たり前のものと刷り込まれている。できないと女性は減点されるのに、男性は家事ができると加点される。そういう従来の価値観を払拭したい。

女性も家事が苦手でもいい。負担が大きいと思えば、誰かに頼んだり、家事代行サービスに頼んでもいい、という世の中になって欲しいという思いを込めてドラマを作っています。そうしたら、もっと女性も軽やかに生きていけるのではないでしょうか」(岩崎氏)

家事ができないと「恥ずかしい」という女性

自身も、結婚したとたん、家事は女性がやるべきだ、という潜在意識が表れてしんどい思いをしたという。夫はふだんから家事をシェアし、時には岩崎氏よりたくさん引き受けるにもかかわらず、「本当は私がやらなければいけないのに、申し訳ないな」と思ってしまう。職業柄、帰宅は遅く家は散らかりがちだが、整える余裕がない自分を責めてしまうと話す。

生活と仕事両立の大変さを実感したこともあり、「がんばり過ぎる女性たちに、全部肯定してくれる癒しと包容力を持つ存在が必要」と思っていたところへ、編成局から『家政婦のナギサさん』ドラマ化の話が持ち込まれ、「そういう人が見つかった」と岩崎氏は話す。

大森南朋扮する家政夫ナギサさんの幼い頃からの夢は、「お母さんになること」だった(写真:TBS提供)

家事代行サービスの体験取材もした。その際も、つい「最近忙しくて掃除に手が回らなくて恥ずかしいです」と言い訳したところ、「女性は皆さんそうおっしゃいます」と返され、肯定されたとホッとすると同時に、「自分だけでなく、女性たちにはそういう意識の壁があるのだと気づかされた」と話す。

家事を完璧にできてこそ女性として1人前、という刷り込みは、昭和時代にその価値観を当たり前とする風潮があった名残りが大きい。昭和時代は、「生活に支障がないようにするなら、働いてもいい」と夫から許可をもらって仕事に出た女性もたくさんいた。平成になって、そういう夫婦は減っていったと思われるが、家事をこなしきれない罪悪感は、いまだに女性たちを苦しめている。

自分の母親が、家事をていねいにする人であった場合も、家事が完璧に見える女性が周りにいる場合もある。メディアで描かれる女性たちの部屋が整っていて、料理上手に見える、あるいはSNSで「ていねいな暮らし」を楽しんでいる風の投稿が気になる場合もあるだろう。

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