「家政夫ナギサさん」に見る女性たちの今の本音 何でもできる男性家政夫に求めているのは

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家事をきちんと評価し夫婦でシェアしよう、というのが2016年『逃げ恥』の掛け声だったとすれば、家事ができなくてもいい、というのが2020年『ナギサさん』の掛け声なのか。

しかし、外注することも含め、誰かが家事をしてくれる部屋に住んだほうがいい、というメッセージもドラマからは感じ取れる。何しろ、メイの妹は「このままだったらお姉ちゃん、自然死しちゃいそうなんで」とナギサさんに仕事を依頼している。

そのあたりは、岩崎氏が家事代行サービスを頼んだ際の実感も影響しているようだ。依頼したのは、部屋の掃除・風呂掃除・ご飯のつくりおき。すると、「いつも適当に掃除していたお風呂がピカピカになっていたり、後回しにして手が回らなかったところがきれいになっている。冷蔵庫を開けたら、料理がキレイに並んで入っているさまを見ると、生活が豊かになったような幸せな気持ちになりました」(岩崎氏)。

女性が求めているのは「ドラえもん」

メイは、ナギサさんを「知らないおじさん」と気持ち悪がる一方で、家の中がどんどんきれいになっていくことは喜ぶ。部屋が片づいたので床が見える、手料理がおいしい、と家事のクオリティには大満足。そのうえ、ナギサさんは探していたお気に入りのイヤリングを見つけ、勝負ジャケットの取れかかったボタンまでつけてくれる。

そして、行き詰まっていた仕事のアドバイスまでもらって、メイは挽回に成功する。仕事で行き詰まっているときに、酔っ払って「お母さん」と呼んでしまう。メイが求めているのは、お母さんなのだろうか。

岩崎氏によると、現役女性たちが求めているのは、お母さんというよりドラえもんなのだそう。「困ったときは助けてくれるし、叱ってくれる。でも、必ず側にいて満たしてくれる存在で性別を超越している」という役割で、その存在が今回は、ナギサさんというわけだ。

ドラマ事情にくわしいライターの田幸和歌子氏は、家事がパーフェクトで癒しの存在であり、同時に男性である、というドラマは、今回が初めてと話す。

昭和時代は、1983年から始まった人気シリーズ『家政婦は見た!』(テレビ朝日系)のように、「他人の秘め事をのぞき見する。あるいは事件に巻き込まれる使い方が多かった」と田幸氏。近年は、そのパロディの2011年放送『家政婦のミタ』(日本テレビ系)が、「現れたときは得体が知れない侵入者だった家政婦が、家族を再生させる物語で大ヒットした」。

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