イノベーション企業が「ゆでガエル」になる理由 ベニオフCEO「企業は社会に信頼を優先せよ」
そう考えると、昭和の高度経済成長時代の日本企業は、硬直化してよくない部分もあったものの、悪い企業だったのかというと、決してそうではなかった。日本は従業員を中心とした民主的社会という形もできていましたから、バランスさえとれていれば悪くはなかったのです。
この本を読むと、ベニオフはセールスフォースという企業を通して、そうした時代のバランスをもう一度取り戻すという感覚があるように思います。株主のための会社ではなく、そこで働く従業員、さらにその周りにいる会社外の人たち、顧客や社会も含めた拡大した企業体。企業という概念に、いったいどこまでを含めるのか、という話も展開されていますね。
会社の定義=膨大な個人事業主の集合体
新型コロナウイルスによる影響でリモートワークが進みましたし、今はフリーランスも増え、非正規雇用も増えています。非正規雇用も、必ずしも下請けだけではありません。
例えば、日本ではタニタが2017年から「社員を個人事業主にする」という取り組みを行っています。これにはいろんな見方があるでしょうが、個人としては、必ずしも会社に所属しなくても個人事業主として生きていく選択肢もありではないかという意見もあります。会社が強制的にそれをやるのは問題ですが、おそらく徐々にその方向に向かうでしょう。
すると、膨大な数の個人事業主の集合体と、適宜それを寄せ集めてプロジェクトを進める、ある種の企業体という業態になります。こうなると、どこからどこまでが企業なのかが難しいですよね。個人の生き方にもつながる問題です。
それこそセールスフォースのようなクラウドベースのソフトを駆使すれば、経理や総務なんかは外注できます。現に30人ぐらいの会社で総務は1人だけ、外部のクラウドを駆使すればそれで十分だという話もあります。
さらに、今は営業活動さえも外注できるようになりました。本体には経営戦略や技術、デザインなど本当にコアな人だけを残して、あとはすべて外注ということもありうるでしょう。日本も副業が推進され、リモートワークがこれだけ進んでくると、いずれこういった業態へと突き進むのではないかと思います。
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