日本のオンライン診療「残念」なほど後れる実態 医師の責任や個人情報の問題は本当に障害か

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「オンライン診療だと、重大な疾患等を見逃した場合には、医師の責任を問われる」と言われます。

確かにそうでしょう。それはわかります。しかし、少しでも疑いがある場合には来院することを求めればよいのではないでしょうか?

患者としても、あらゆる場合にオンライン診療だけで済ませるなどとは思っていません。

実際に通院しているのは、定期健診的な場合が多いのです。とくに高齢者の場合にはそうです。「病院に行ったところで、血液検査をした後は、医師と話をするだけ」という場合が少なくありません。

先に述べたように、近くの病院で血液検査だけをしてもらえるなら、後は定期診断をしている病院にその結果を伝え、それをもとにオンラインで診断をしてもらい、薬の量を調整する、といったことで十分な場合が多いのです。

しかし、先に述べたように、私の経験では、それさえもままなりませんでした。 

また、システムの導入費用が高いことや、個人情報の流出などという問題も指摘されています。

それらは理解できます。だからといって「導入できない」と一概に結論づけることはできないと思います。もし本当に必要なものであれば、個人情報流出などに万全の備えをし、かつ必要な費用をかけても導入を進めるのが望ましいのではないでしょうか?

診療報酬が低いという問題があったとしても

オンライン診療が導入できない本当の理由は、別のところにあると、考えざるをえません。

「オンライン診療は診療報酬が低く設定されているため、経営面を考えると導入を控えざるをえない」といったことはないでしょうか?

私は、「病院は経営事情を考えるべきでない」と言っているのではありません。経営できなければ、医療サービスを安定的に供給することはできないからです。

しかし、多くの患者がオンライン診療を望んでいるのであれば、病院がそれに対応できるように診療報酬の体系を見直していくことが必要でしょう。

アメリカで保険適用対象を広げたためにオンライン診療が広がったという事実は参考になります。

情報技術の進歩に合わせて医療制度を改革していくことは、コロナが収束したとしても求められることです。それは、ニューノーマルの社会における重要な構成要素となるでしょう。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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