「コロナ第2波」日本に決定的に足りない対応策 従来の感染症法に頼っていては限界がある

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このあたりの技術進歩は日進月歩だから、コロナの流行が収まる頃には、検査方法は今とはまったく違っていてもおかしくない。病院や介護施設に入るとき、入り口で唾液を出して検査をして、陰性の人だけが入場を許されるようになっているかもしれない。要する時間が数分程度なら、十分実用化できる。

あるいは、コンビニなどでPCR検査をうけ、「陰性確認証明書」を発行してもらうようになっているかもしれない。

実は、このような流れは世界で始まっている。アメリカのプロバスケットボールリーグNBAは毎日、野球のメジャーリーグは隔日、サッカーの英プレミアリーグと独ブンデスリーガは週に2回、PCR検査を受けることが義務づけられている。

このような状況はプロスポーツだけではない。7月20日、中国政府は中国に向かう航空機に搭乗する人にPCR検査を義務づけると発表したし、ハーバード大学などアメリカの大学は、9月からの大学再開に備え、週に2回検査をすることを検討している。

PCR検査の限界

もちろん、PCR検査には問題がある。それは感度が低いことだ。ある程度体内でウイルスが増殖しないと陽性にならないのだ。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが5月13日に、アメリカの科学会誌に発表した研究によると、コロナに暴露された日の感度は0%、つまり誰も陽性にならないが、その後、4日後の発症時では62%、その3日後には80%に上昇する。

これなら、いったん陰性結果が出ても、日を改めてPCR検査を繰り返せば、見落としを減らすことができる。季節性インフルエンザの診療でやられている方法だ。初回は陰性でも、2回目の抗原検査で陽性となるという患者は珍しくない。このやり方がコロナ対策でもコンセンサスになりつつある。英科学誌『ネイチャー』は7月9日号に「コロナの検査は感度より頻度が重要」という記事を掲載している。この記事では、無症状の人に対しても毎週PCR検査を実施することを推奨している。

この状況は日本とは対照的だ。日本のPCRの検査能力は1日当たり約3万2000件で、抗原検査を加えても約5万8000件だ。これは海外と比べると圧倒的に少ないし、現時点で抗原検査に過剰な期待は抱かないほうがいい。なぜなら、抗原検査の唾液サンプルでの有用性は十分に検証されていないからだ。

国際医療福祉大学の研究チームが7月7日にアメリカ『臨床微生物学誌(Journal of Clinical Microbiology)』に発表した研究によると、唾液抗原検査の感度はわずかに12%だった。

この研究には103人のコロナ感染患者が登録されたが、88人が症候性で、無症候性つまりウイルス量が少ないと考えられる感染者は15人にすぎなかった。ある程度体内でウイルスが増殖した状態でも唾液抗原検査は陽性にならないことになる。現時点で抗原検査に唾液を用いるのは難しい。

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