このphonestheme、面白いことに母音にも当てはまるものがあるそうです。それによると、wee(ほんのちょっと)の母音の/i/や、little(小さい)の母音の/ɪ/など、口の中で前のほうの高い位置で発音する母音には「小さい」という意味があり、all(すべて)の母音の/ɔ/や、lot(たくさん)の母音の/ɑ/などの口の奥のほうの低い位置で発音する母音は「大きい」という意味があるそうです。
オノマトペは言語の壁を越えるのか
そういえば、先ほどの日本語の母音でも「い」の音は「細い、鋭い」という意味で、「あ」や「お」には「大きい」というイメージがありましたよね。学者の中には、このように言語の壁を越えて共通する音象徴があると主張する人たちがいるそうです。ただ、これには否定派の人もいるようで、例えばsmall /smɑl/(小さい)とbig /bɪɡ/(大きい)はそれぞれ真逆の意味になっているという指摘もあるそうです。
これに関して、ネットでおもしろい論文を見つけました。What do English speakers know about gera-gera and yota-yota?: A cross-linguistic investigation of mimetic words for laughing and walking (英語のネイティブスピーカーが「ゲラゲラ」や「よたよた」からわかることは? 笑いと歩行のオノマトペに関する通言語的調査)というもので、日本語を知らない英語のネイティブに、笑いや歩行に関するオノマトペについて、どのような印象を受けるかというのを聞き、日本語のネイティブの回答と比較したようです。おもしろい研究ですね!
その結果、一部の例外を除いて、笑いについてのオノマトペは、日本語ネイティブも英語ネイティブも回答がほぼ一致したというから驚きです! 歩行については、濁音のオノマトペについては「大柄な人が歩く様子」と日英で共通したそうなのですが、それ以外は不一致だったとのこと。どうやら言語を越えて共通の音象徴と、特定の言語にだけ有効な音象徴というのがあるようです。
日本語のオノマトペは日本人同士でしか理解できないものだとばかり思っていましたが、日本語ノンネイティブにも伝わるものがあるのですね。皆さんも外国人の友人や同僚などがいたら、ぜひ日本語のオノマトペについて一緒に話してみてください。何かおもしろい発見があるかもしれません。
筆者もジョンにこの論文を見せて、「びちゃびちゃ」と「びしょびしょ」がどのように違って聞こえるのか、彼の感覚を試してみました。すると「『びちゃびちゃ』のほうが汚い感じで、『びしょびしょ』のほうがきれいな感じがする」との回答。なかなかセンスありますよね。
でも、「結局この2つのオノマトペがどう違うのかはわからなかった」と伝えると、不満げに「ほかの人に聞くからいい」と言うジョン。Well, good luck! (じゃあ、頑張って!)
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