筆者は長年、学習塾を経営してきましたが、親の都合で無理やり入塾させられたお子さんの成果が出ないことは大変多くありました。すると親は、成績が上がらないのは塾の問題、もしくは子どもに合っていないと考え、塾を転々と変えたりしますが、本当の論点はそこではありません。問題の本質は、塾の選択ではなく、親のあり方のほうにあるといって過言でありません。
そこで、「これ以上、子どもの勉強に関しては『声かけをしない』」というご提案になるのです。
「そんなことをしたら一切勉強もせず、成績は地に落ちてしまう」と思われる方も多いかもしれません。しかし、30年以上塾や学校の経営に携わってきた筆者の経験上、多くの場合はそうなりません。むしろ成績が上がったと、驚きの声をたくさんいただいてきました。直接そうした結果を報告いただいただけでも数十人以上に上ります。
例えば筆者が開催する勉強会に過去5回ほどお越しになったAさんのケース。中2の息子さんの学校での成績は真ん中より下で、母親であるAさんは悩んでおられました。そのAさんにも口うるさく言ってしまう傾向があると聞き、まずはそれを思い切って、やめていただくことをすすめました。
最初は2~3日で我慢できなくなり、つい口を出してしまっていたそうですが、ある日、Aさんはついに「諦めた」そうです。中学生の子の勉強に口を出してきてうまくいっていないのだから、一度本気で口出しをやめてみようと。
するとどうなったでしょうか。1カ月ほど過ぎたころ、息子さんに自分から勉強に取り組む様子が見られ始めました。そしてその後の中間テスト、期末テストと、次第に順位をあげていき、1年ほどたったころには学校で成績上位になったというのです。
まさかと思われるかもしれませんが、これは非常によく報告いただく話です。
この事例を聞いて、自分も試してみようかと思った方には、具体的に以下のような進め方をご紹介したいと思います。
上下関係のない会話を通じて親子の信頼関係をつくる
<口うるさい親がとるべき3つの対策>
これまでの親子の会話の歴史をたどれば、勉強については、親からの「上から目線」の話が多かったことでしょう。
親は勉強のことになると「宿題やりなさい!」「もう勉強の時間ですよ、いつになったらやるの!」とやたらと強制的な言葉で語りかけます。もし、上司、部下の関係のように、子どもが親を上の人間だと思っていれば、反発はできず動かざるをえません。それは嫌々勉強するという事態を引き起こし、あまりいい結果につながりません。
一方、勉強以外の場での親子のコミュニケーションは、そこまで「上下関係」があるでしょうか。雑談のときは、上下なく楽しく話していることも多いかと思います。
親にできることは、そうした上下関係のない会話を通じて、日頃から親子の信頼関係を作ることです。その関係性があれば、子どもの側から、勉強や進路、塾などの相談を親にしてみようかと考えることがあります。必要なのは、そうして子ども自身に考えてもらい、判断させることです。そのときは真剣に対応し、相談に乗ってあげ、最終判断は子どもにさせるという形を取られるといいでしょう。
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