「職場内クラスター」発生を防ぐ合理的方策 専門家委員会のメンバーによる警鐘と提言

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「体調の悪い人」とは、具体的には、「①発熱、②咳、③喉の痛み、④下痢」といった症状がある人のことを指します。これらは、ウイルスを排出している可能性が高い症状だからです。こうした症状がある人は、ぜひ休んでいただきたい。ここに頭痛や倦怠感などが入ると他の病気の可能性もあるかもしれないので難しいところですが、上記4つの症状がある人は最低限休ませるように徹底するべきです。

また、嗅覚・味覚障害は新型コロナウイルスの感染では1割程度に出るとされています。この症状は「感染している可能性が高いサイン」だと言われていますので、症状があれば休んだほうがいいでしょう。

前日にこれらの症状があって、朝起きたら回復していたとしても、最低24時間以上、できれば48時間は症状が再び出ないかを確実に確認する必要があります。熱が上がったり下がったりすることがよくあるようです。

これまでにクラスターが発生した職場というのは、発熱などの症状があるにもかかわらず出勤する人がいた、というケースを始め、コールセンターのように多くの人が声を出していた、集まって朝礼などをやっていた、休憩室が狭くて人が密になっていた、懇親会を行ったという環境にあったようです。ですから、こうしたところをしっかりと対策をしていくだけでも職場内クラスター発生の予防ができます。

また、空気中に飛沫よりも小さな粒子がしばらく浮遊して、それを吸い込むことによる感染形式があり、話題となっています。これは「エアロゾル感染」「マイクロ飛沫感染」と暫定的に呼んでいるものです。「飛沫感染」と「空気感染」の中間くらいのイメージです。

これは換気をすることで感染リスクを抑えられるのですが、オフィスビルは窓が開かないことも多く、設備導入などの費用もかかってしまいます。大声を出すような職場でマスクをしないような人がいれば窓を開ける換気も必要ですが、通常は機械換気を用いることで十分だと考えています(もちろんメンテナンスなどはされていることが前提ですが)。

さらに注意してほしいのは、地域での感染状況です。過去1週間に感染者がまったく出ていない地域と、東京などのように一定数出ている地域では、かぜ症状のある人の処置も含め、さまざまな対応法が変わってきます。感染がみられる地域では、体調不良がある人は必ず休むように、何度でも徹底することが大切です。

これまでも多くの企業のガイドラインを見てきましたが、大きな会社だと、東京で作った基準をそのほかの地域に転用しているため、全体的に地方で、特に感染者が少ないところではやや厳しくなっているようにも思います。職場の消毒などは、行うとなると非常に大変です。実際に流行がみられる地域では対策を強めるというような、その地域の状況に合わせた対応の仕方が望ましいと思います。

従業員に対する検査について

今、社会経済活動を維持するために、企業でPCR検査や抗原検査をどんどん実施していくべきなのではないかと考える人がたくさんおられるようです。無症状の従業員にも検査をしろと言っている人は、自分が陰性だと思っているのかもしれませんが、陽性の場合、指定感染症ですから入院になってしまいます。

入院しないまでも、一定期間、ホテル療養や自宅療養になります。ですから、現実問題として従業員全員に「検査をしろ」とは言えないのです。

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