感染者ゼロ「八丈島」の島民たちが抱える葛藤 観光業などを営む住民の本音を聞く(前編)

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八丈島では3月から4月にかけて、島の春の観光シーズンの目玉イベントである「第54回八丈島フリージアまつり」(3月20日~4月5日)が中止に追い込まれたほか、学校、保育園が休校、休園し、集会施設、温泉施設なども閉鎖された。

緊急事態宣言解除以降は、大半の施設が再開しているが、キャンプ場は当面の間使用禁止だ。イベントも「第48回八丈島夏まつり」「八丈島納涼花火大会」「島婚IN八丈島2020」などが中止となった。感染者ゼロを維持している一方で、観光事業者などは大きな打撃を受けている状況だ。

コロナ禍の中で、島の主要産業である観光業などを営む八丈島の人々はどのような状況に置かれていたのか。リードホテル&リゾート代表取締役の歌川真哉さん、「第64代ミス八丈島」の大澤萌さん、玉石セラピーサロンやカフェを経営する玉井由木子さん、町議会議員でネイチャーガイドの岩﨑由美さんの4人の方々にコロナを実感した時期や、具体的事例について尋ねてみた。

歌川:私は八丈でコロナの影響を受けたワースト3に入ると思っています(苦笑)。この間の動きを振り返ってみると、お客さんが減りだしたのは2月になってからですね。3月になると2~3割減る状況となり、かなりやばいなと思い始めました。旅行会社からの要請もあり従業員のマスクや消毒対応などをいち早く行いました。

3月初旬には国の融資制度を活用して1億円の借り入れも行い、その後の事態に備えましたが、こんなに大きな影響が出るとは思いませんでしたね。影響という意味では3月下旬の小池百合子都知事の“ロックダウン発言“と志村けんさんが亡くなったことが大きかった。一気にお客さんが減りましたね。

島のイベント中止が生活を一変させた

大澤:私がコロナを実感し始めたのは2月終わりごろですね。毎年、ミス八丈島は、3月下旬から4月上旬にかけて行われる「八丈島フリージアまつり」のPRのためにキャラバンに出かけます。

石川県や都内各所、そして都知事さんも訪ねて行きますが、今年は3月になったらすべて取りやめになってしまいました。ミス八丈島としての活動がゼロになってしまったのです。そのうち収まるだろうと思っていたのですが、5月に都内の竹芝桟橋で行われる「島じまん」というイベントも中止なってしまい、深刻さを実感しました。

玉井:うちの店は例年ですと「フリージアまつり」あたりから忙しくなります。3月上旬の時点では、2号店がある大里地区(玉石垣などがある観光エリア)でも観光客の姿は普通に見られました。それが、フリージアまつりが行われるはずだった春休みの頃になると、予約の電話がなくなり、人出が無くなり、キャンセルが続出という状況に一変しました。

予約表は真っ白です。緊急事態宣言中にただ1人、都内のリピーターのお客さんがいらっしゃいました。島のホテルに滞在してリモートワークをされていた方で「ご迷惑でなければ伺ってもいいですか」とものすごく低姿勢で、ありがたかったですね。

岩﨑:個人的に意識し始めたのは2月初旬です。ネイチャーガイドの仕事の面での影響もそうですが、町議として行政対応などに気をつけなければならないなという思いが強かったですね。

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