4) 自力でお金を取る:
自分でプロポーザル(提案書)を書いて研究費を得れば、自分がプロジェクトのマネジャー(principal investigator, PI)になれる。JPLでは、新入りを含むすべての職員がプロポーザルを書くことができ、研究費を得れば、どんなに若くてもPIになることができる。
また、研究費を獲得したこと自体がその人の実績として評価もされる。もちろん、プロポーザルの審査ではPIの経験も評価されるから、若手がいきなり何十億円という大きなプロジェクトのPIになることはないが、規模の小さい基礎研究のプロジェクトならばチャンスはある。僕もつい最近、額は少ないが、はじめて研究費を獲得し、小さなプロジェクトのPIになることができた。
夢の実現を目指して
著書において僕は、宇宙開発の歴史に名を残すことが夢だと書いた。MITを卒業しJPLに入ったのは、高くそびえるこの山の登山口にたどり着いたことでしかない。この1年で僕は必死に頑張り、もがき、そしてこの山がいかに高いかを思い知った。まだ僕は1合目にも至っておらず、しかも足を滑らさないように必死に山腹にしがみついている状態だ。
確かに僕はMITの留学を通して多くを学んだし、「グローバル人材」なんていう軽々しい言葉がはやっているご時勢であることも手伝い、僕はありがたくも著書を上梓させていただく機会を得た。滅多にない機会であることは間違いない。だから今までの30年の人生の総決算だと思って、僕のすべての経験、すべての思想、すべての哲学をこの1冊に込めた。名著だと自画自賛しようとは決して思わないが、自信を持って世に出せるものを書けたと自負している。
だが同時に、留学を僕の人生のピークにしてはいけないと、強く自分を戒めている。たった7年の海外経験で「グローバル人材」だなんて呼ばれてちやほやされ、偉くなった気になり、なにかとアメリカを引き合いに出して日本はああせいこうせいと威張ることだけで残りの人生を終えたくはない。僕の仕事は論説ではなく宇宙開発だ。これから登るべき、もっともっと高い山がそびえている。本を一冊書いたくらいで偉くなった気にならず、謙虚にその山に立ち向かい続けねばならない。
だから今回の著書は、僕の人生におけるほんのプロローグにすぎないと思って読んでいただきたい。本編の完結は、何十年後か、僕が山を登りきるまで、気を長く待っていただけたらと思う。
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