遠出しなくても「休み楽しむ」ギリシャ人の知恵 コロナで「どこにも行けない」と嘆くあなたへ

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父の夏の過ごし方はとてもシンプルです。まず大切なことは散歩を欠かさないこと。海へ行っても、山へ行っても朝晩2回の散歩は欠かしません。運動不足にならないようにということもありますが、生活のリズムを整える意味もあるそうです。朝の散歩では鳥などの鳴き声を聞いたり、日の出を見たりすることで一日過ごす活力を得て、夜は静かな雰囲気の中で1日の終わりを感じます。

そんな散歩好きの父がいつも愛用しているのが、歩数計です。一度日本からのお土産でプレゼントをしたのですが、具体的な数値として目に見えるのが面白いらしく、毎日の散歩がより楽しくなったようです。一日の終わりには必ず、母にその日の合計の歩数を報告しています。また以前は、ギリシャではあまり歩数計を見かけることがなかったので、いつも公園や道で会う散歩仲間に自慢していました。やはりあまり見かけることがないので、散歩仲間からの評判もよかったみたいです。

でも、最近ではギリシャでも歩数計を見かけるようになり、一度父の散歩仲間も歩数計を買ってきて父に見せました。ところが、父は日本の製品の品質の高さを知っているので、「ギリシャで買った歩数計と日本の歩数計は違う!」と言ってやったと誇らしげに語っていました。結構負けず嫌いなんです……。

初めての海外旅行は日本だった

なぜ日本人でもない父が、そこまで日本の肩を持つかというと、これには理由があります。先ほど、父は最近まで海外旅行をしたことがないと言いましたが、初めての海外旅行先は、なんと日本でした!約10日間の旅で、東京の高層ビル群や京都の伝統的な建物など、見るものすべてが初めての経験で、とても楽しんでいたのを覚えていますが、この旅で日本のことがより好きになったそうです。

好奇心旺盛なので、見知らぬ土地でも散歩は欠かせません。旅行の前に覚えた「おはようございます」とあいさつしながら、まだ私たちが起きる前から1人で散歩に出かけていました。日本人はあいさつをすると丁寧にあいさつし返してくれ、とても礼儀正しかったと言っていました。

一度、道に迷ってしまい途方に暮れていたときも、近所の方にホテルまでの道を教えてもらいました。もちろん、父は日本語を話せません。散歩に行く際は必ずホテルの住所が書いてあるカードを持つように言っていたのでホテルの住所はわかるのですが、その位置からどうやってホテルまで戻ればいいのかはいくら身振り手振りを使ってもわからなかったそうです。

すると畑仕事をしていたその方は父の手を取り、ホテルの見えるところまで連れて行ってくれました。わざわざ仕事の手を止めて、自分のために道案内をしてくれたことに父はとても感動したようで、今でも散歩仲間にこの話をしています。何度も何度も父が話すので、散歩仲間の中には日本に行きたいという人が結構増えてきているようです。

父の夏の過ごし方で大切なことの2つ目は趣味です。現在、父は定年退職していますが、退職前からの趣味はテニスでした。私と弟と一緒に始めたので、30歳を過ぎてから始めたわけですが、3人の中で一番熱心だったのが父です。今でも週2、3回は友人とテニスをしていますし、以前は職場の大会に参加して親子程の年の差のある相手に勝ったりもしていました。

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