そんな父が定年後に始めた趣味が2つあります。料理とチェスです。学生の時にレストランでアルバイトした経験はあるようですが、定年前はまったく料理をせず、母に任せきりでした。定年後、時間に余裕ができたこともあり、何気なく料理を始め、今では毎日のように料理しています。自らアテネの中央市場に買い出しにも行きますし、自宅の庭にあったバラのスペースを狭めて家庭菜園も始めました。
トマトやナス、主人が職場でもらってきた紫蘇など、栽培している植物の種類も豊富ですが、この紫蘇で忘れられないエピソードがあります。紫蘇の葉を植えると繁殖力がすごくて、すぐにたくさんの葉をつけました。始めのうちは餃子の中に入れたり、ハンバーグを焼いたときの上に乗せたりしていましたが、そこで発想力が豊かな父はひらめいてしまいました。「ファソラーダ」というギリシャの伝統的なスープに入れようと思いついたのです。
白インゲン豆をトマトソースで煮込むスープなのですが、ここに色合いがよくなるから……という理由で紫蘇を入れました。味の方は……ちょっと複雑でした。トマトの味と紫蘇の香りがぶつかってしまって、もう戦争しているような感じでした(笑)。
いろいろトライするので、たまにはこういうこともありますよね!いつもは美味しい料理を作っていて、母もすごく助かっているみたいです。日本には定年離婚という言葉があると聞きましたが、むしろ定年ハネムーンと言えるかもしれません。
負けると犬が驚くほど激怒
チェスは、頭の運動によいからということで始めました。コンピューター相手にやっていますが、なかなかレベル5の壁が越えられず(最上はレベル10)、よく怒っています。負けたときの悔しがりようはすごいです。愛犬レックス(オスのドーベルマン)の家での定位置はテレビの横にあるソファで、もう8歳なので1日の多くをそこで寝ながら過ごしていますが、父がチェスで負けるとあまりに怒るので、びっくりして飛び起きます。
料理もチェスも若いときからやっていたわけではないので、正直父より上手な人は数えきれないほどいると思います。SNSに投稿するわけでも、誰かに褒められようとしているわけでもありません。
もちろん、「美味しかった」と言われれば嬉しいと思いますが、父は本当にそれが好きで、とてものめりこんでいます。だからこそ、よりよい食材を求めて市場にも行くんだろうし、チェスで負けると本気で怒るのだと思います。
小さいときに父に言われた言葉で、今も覚えているのが、「遊園地に行くのではなく、自分の遊園地を作りなさい」ということです。これは本当に自分で遊園地を作るのではなく、自分が楽しいと思うことを見つけて、それをやりなさいということです。
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