打開策となったのが、2008年頃から海外で本格展開したライセンス事業だ。従来の海外事業は、日本の消費トレンドを踏襲した自社企画商品の販売が中心だった。これを現地企業へのライセンス提供へ移行させ、アパレルなどで現地の消費トレンドとハローキティが組み合わさった商品が展開されるようになった。
物販事業と異なり、ライセンス事業は商品企画や在庫のコストがかからないため、海外事業の拡大が全社の利益率を大きく押し上げた。ヨーロッパや北米におけるライセンス事業が奏功した結果、最盛期の2014年3月期には売上高770億円、営業利益210億円と、利益率は30%に迫った。
好調の海外事業が急ブレーキ
ただ、最初にライセンス事業を拡大した欧州で、債務危機の影響から業績が失速し、近年も他社のキャラクターとの競争が厳しくなっている。2011年3月期には売上高で208億円、営業利益で111億円を稼ぎ出したが、2020年3月期は同21億円、1億円弱の赤字に陥っている。
欧州をカバーする形で成長していた北米も、2014年3月期に売上高で167億円、営業利益で87億円を計上して以降、収益は右肩下がり。きっかけは2013年に公開され、日本では『アナと雪の女王』として知られるウォルト・ディズニーのアニメ映画『Frozen』のヒットだ。

ウォルト・ディズニーはウォルマートといった現地の大手小売量販店で、『Frozen』に関するライセンス商品の陳列棚を確保した。その結果、サンリオなどのキャラクター商品が押し出されてしまったのだ。
アマゾンなどEC(電子商取引)企業の台頭による大手小売量販店自体の苦戦もあり、2020年3月期は売上高で33億円、営業損失6億円と、稼ぎ頭から一転して課題エリアとなってしまった。
欧州や北米で苦戦を強いられた外部要因はまだしも、キャラクター間の競争にサンリオがついていけないのはなぜか。当時専務だった辻新社長は2018年のインタビューで、「一番の原因はキャラクターのブランド力の問題だと考えている。キャラクター商品は生活必需品ではないため、ブランド力の低下は売上減に直結してしまう」と語っていた。
ブランド力の根源にあるのが「ストーリー性」だ。キャラクターは、映画やテレビ、マンガ、ゲームなどから生まれた「メディアキャラクター」と、そのような出身母体を持たない「ノン・メディアキャラクター」に大別できる。
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