メディアキャラクターには、「ミッキーマウス」などウォルト・ディズニーのキャラクターや、「アイアンマン」など2009年に同社が買収したマーベル・エンターテインメントのヒーローが挙げられる。日本でいえば任天堂のゲームに登場する「マリオ」もそうだ。
一方、「欧米では売り上げのほとんど」(辻専務、当時)を占めるハローキティは、この「出身メディア」を持たない。これがの看板キャラクターの弱点であり、大きな経営課題だといえる。
『ライセンスビジネスの戦略と実務』の著書があり、ライセンシングビジネス専門のコンサルタントである草間文彦氏は、「消費者に”食い込む”ブランド力の確立には、ストーリーを生かしてキャラクターに性格を持たせ、じわじわ心に入っていくマーケティングが必要。ハローキティは知名度こそ抜群だが、(明確なストーリーを持たないため)ただかわいいという強みだけで戦っている」と分析する。
あるサンリオ関係者も「公式ショップやピューロランドのようなテーマパークにおける世界観の体験と並んで、ストーリー性のすり込みがキャラクターの競争力の源泉だが、ディズニーには後者で大きく劣る」と話す。
「次の戦略が非常に立てにくい」
こうした状況を打開するため、2018年には当時専務だった辻朋邦氏が中心となって3カ年の中期経営計画を策定した。
ブランド戦略を策定する部門の新設といったマーケティング強化や、アニメ事業の確立も盛り込み、キャラクターのストーリー性向上に重点を置いた。2019年には、サンリオキャラクターを題材としたハリウッド映画を全世界に配給する計画を発表。2021年3月期に営業利益100億円を目標に掲げていた。
だが、欧米の業績回復の兆しが見えないまま、安定成長を見込んでいたアジアが伸び悩み始めた。海外戦略の軌道修正が不可欠な中、たたみ掛けるように新型コロナが発生したため、辻新社長も説明会の中で「次の戦略が非常に立てにくい」と本音を漏らす。
辻新社長は「経営戦略を踏襲するつもりはない」と言ったが、今回の説明会で「世界のマーケットの先が読めるようになったときに、海外の徹底的な戦略を発表する」と、最大のポイントである海外戦略の新機軸を示せなかった。ただ、4月に新設したグローバルマーケティングの部署を通して「これまでは国内に偏っていた戦略に、よりグローバルな目線でしっかり投資していく」(辻新社長)と強調した。
サンリオキャラクターを題材としたハリウッド映画の公開時期が見通せない中、アニメやゲームなどの大型企画で「ハローキティの物語」を海外に訴求する具体策が示せるか。まずは、その展開で新社長の手腕が試されそうだ。
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