「痴漢レーダー」でわかった"危ない曜日"の特徴 周囲の「第三者」こそ知って助けてほしい
「最初の実証実験では、システムの機能やモニターの反応などの検証を進めてきました。今後、社会情勢がある程度、正常に戻った後、モニターが専用アプリを実際に使って、痴漢行為を受けたと認識したときに通報ボタンを押す実証実験を行う予定です」
痴漢防止の鍵は第三者にアリ
『Radar-z』もJR東日本の痴漢対策アプリも、加害者でも被害者でもない、第三者への働きかけを重視しているのが特徴的だ。
『男が痴漢になる理由』の著者で大森榎本クリニックの精神保健福祉部長・斉藤章佳さんは、こう指摘する。
「被害防止にあたっていちばん有効なのは“サイレントマジョリティー”といわれる第三者、被害者や加害者の周りにいる人たちへの働きかけです。彼らの多くは、痴漢は自分とは無関係だと思っています。第三者の問題意識を高めることで、痴漢を周囲から防いでいくことは重要です」
斉藤さんの所属するクリニックでは、痴漢や盗撮をはじめとした性犯罪加害者の治療に先駆的に取り組んでいる。
2005年5月に出所後の性犯罪防止プログラムを始めて以来、2000人以上が治療プログラムを受けてきた。
「そのうち99%が男性で、さらに6割が4大卒で、妻子もいるサラリーマン。この層が最も多いです」(斉藤さん)
プログラムを受けた加害者の多くは自分の加害行為が性暴力であるという認識に乏しく、痴漢をしても「ちょっと触っただけ」と軽視しがちだ。
「痴漢行為には多くのバリエーションがあり、耳を触る、露出をする、精液をかけてくるなど20種類ぐらいのパターンがあります。ひどい場合は性器の中に指を入れることもある。こうした実態を第三者である男性たちはあまりに知らない。実態をよく知って痴漢問題への意識が高まれば、被害に遭っている人がいるんじゃないかと周りが気にするようになります。痴漢を防ごうという流れや空気が作れるはずです」
前出・片山さんは、痴漢レーダーを始めて気づかされたことがあると話す。
「痴漢は加害者と被害者の間だけにとどめる問題ではないということです。“これまで被害を見かけても何もできなかった”“介入はできなかったけれど被害報告で貢献したい”と言ってRadar-zを使ってくださる第三者がいます。“#withyellow”というボタンで痴漢撲滅運動に協力していただくと、近くで被害が発生したとき、近距離通信技術で通知を受け取れます。
勇気のある人は加害者を捕まえてもいいかもしれませんし、せき払いしたり声をかけたりして、その場の空気を変えることもできますよね。それぞれが自分にできる方法で被害者を助けることができればいいと思っています」
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